第4話 油断した僕

 名称:鋼木の棍棒

 効果:火魔術耐性 腐敗耐性 腕力上昇 重力加速


 ゴブリンが持っていた棍棒、中々にいい効果が付与されている。これは、まともに戦っていたら危なかったかもな。


 武器も手に入れたことで、僕は早速探検を開始した。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 最初に発見してのは、歩くキノコだった。


「キノコ·····、鑑定」


 種族名:脱兎キノコ:魔植物:魔物

 スキル:なし


 僕は脱兎キノコに棍棒を振り下ろした。思いのほか簡単に、僕の攻撃は脱兎キノコにヒットする。脱兎キノコの傘は凹んだ。


 消えない。


 ゴブリンを倒した時、ゴブリンの死体は消えた。だが、脱兎キノコの死体は消えない。そして、気づく。この脱兎キノコのステータスを確認した時、種族名に魔物と表記されていた。


 僕は、もう一度、脱兎キノコを見つけ、襲う。脱兎キノコは消えない、なぜ。僕は、もう一度、脱兎キノコを見つけ出し、襲う。脱兎キノコは消えない。


 僕は、なぜ消えないのか?の疑問を晴らすため脱兎キノコを襲い続けた。


 そして、気づく。脱兎キノコからは魔力の揺らぎがないこと。


 魔力の揺らぎ。異世界ものでは、よく聞く言葉だ。魔力を持った生物が見せるオーラのようなもの、僕の想像通りなのだとすればだが。


 次は、魔獣を狙う。実は、すでに1匹見つけてあった。最初に殺した脱兎キノコの死体を食い漁る、90センチ程の大蛇だ。


 種族名:擬態蛇:龍蟲型:魔獣

 スキル

 擬態 毒霧吐息


 種族は魔獣だ。僕はまず最初に、頭に棍棒を叩き付けた。ビタンビタンとのたうち回っている。とどめを刺すべく、今度は胴体に棍棒を叩き付けた。


 倒れた大蛇は、魔力の揺らぎが無くなり、黒い霧になって霧散した。


 倒した甲斐があった。やはり、魔物は魔力を持っていなく、魔獣は魔力を持っているようだ。


 確証を得れた。よし、探索再開だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 次に発見したのは、僕に背を見せて歩く、2つの影だった。蟹股で、二足歩行、緑色の肌の見覚えのあるヤツらだ。


「ゴブリンだ。しかも、手になんか持ってる」


 種族名:ゴブリン:魔獣

 スキル

 棍棒術 穴掘り


 種族名:ゴブリン:魔獣

 スキル

 投擲 消音足技


 種族名:暗夜鼠:魔物

 状態:死亡

 スキル

 暗視


 最初に倒した3匹と同等、または、それ以上か。しかも、その手には、奴らの獲物であろう、大きな鼠が握られている。


 気配完全遮断。


 気づかれないよう、スキルを駆使しつつ近づく。距離は2メートル程。


「不意打ち御免!」


 ドン


 鈍い音と共に、僕はゴブリンの背後から頭に棍棒を振り下ろす。抵抗は全くない。


 振り向くと、もう1匹のゴブリンは逃げていた。逃がすものか。僕は光系統魔術


 幻光げっこう


 を使い、逃げたもう1匹のゴブリンに襲いかかった。


 これで2匹。取り逃しはない。


 そして新しい魔獣だ。これは心躍る。もっともっと新しい魔獣に会いたいものだ、できるなら生きてる姿で。


 早速、魔力の揺らぎ。僕は草むらの向こうで微妙に動く、何かの存在を感じ取れていた。あまり大きくはなさそうだ。


 草むらの反対側に、ゆっくりと回り込む。


 種族名:死期鳥:鳥型:魔獣

 スキル

 麻痺耐性 強酸作成


 鳥か。感知能力が凄そうだよな。ここはより慎重にいこう。


 気配完全遮断+幻光


 僕は気配を消しつつ、音で感知されないよう、高速で近づいて、死期鳥に襲いかかった。


 死期鳥は飛び立つ間もなく、僕に、胴体に衝撃を与えられ、地面に横たわる。


「ふぅ、飛ばれたら厄介だったから。その前に倒せてよかった」


 よし、次だ。できれば、見たいことないやつがいいな。


 そうやって、魔物や魔獣を探していると、僕は影を捉えていた。


 クラゲの様なものが、低空をふわふわ浮遊している。移動速度は早くないが、その動きは不規則で、奇妙だ。


 種族名:ヒメル・リューゲ:無形型:魔獣

 スキル

 魔力吸収 浮遊 虚像


 近づいてみるが、何の反応もない。ただ、僕の10メートル前を、ふわふわと浮いているだけ。


 これは、攻撃していいのか?僕はとりあえず叩いてみることにした。その目標は、キノコの傘のようにも、クラゲの頭のようにも見える、胴体部分の中心部、目の様な模様が付いた場所を。


 僕は、何があっても反応できる様、ゆっくりと慎重に近づく。そして2メートル程の距離に近づいた途端だった。ヒメル・リューゲが、想像以上に俊敏な動きを見せた。


「まずい!!」


 10本ほどの触手が僕に向かって伸びてきたのだ。ウネウネと動く透明な触手の速さに僕は、反応しきれず触手に腹を刺されてしまった。


「う、魔力を吸われているのか?」


 触手を通じて、魔力が吸い上げられていくのが分かった。油断した、やばい。


 僕は無我夢中で脱出を図った。僕は、触手を握り


 浸透放電


 僕は、ヒメル・リューゲに電気を流した。感電死し力を失ったヒメル・リューゲはドサッと地面に落下した。スキルの力で浮いていたため、死んだその体が浮力を失ったのだ。


「危なかった、やはり油断はダメだな。そう言えば、ヒメル・リューゲには浮遊っていうスキルがあったのに、死期鳥には飛行系のスキルはなかったな。鳥型魔獣なのに」


 うん?まてよ、翼が無きゃ飛行スキルが使えない?そもそも、飛行はスキルじゃなく魔術? 


 例えば、ゴブリンに歩行や吸収ってすきるはないよな。それと同じで鳥が飛ぶのは当たり前のこと。それはスキルでも魔術でもなく、肉体の持つ当たり前の機能。そこには、魔力や技能は関係していない。


 さすが異世界。まだまだ魔物や魔獣について分からないことだらけだ。


「未知上等!!」

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