第六十二話 脱出そして独立
そして三月
私たち二人は周平の運転する車で△△県□□市にやって来た
目的は仮契約している賃貸アパートの下見と、周辺の環境の見学、それにそれぞれの職場の通勤経路確認
賃貸アパートは住宅街の一角の1Kの小さなアパートで二人で住むには少し狭いが家賃が安いのが魅力
バストイレ別でウォシュレット付き・・・これなら十分かな?
周平は賃貸会社の人と二人入居は可能かと打ち合わせをしている
大丈夫との返事なので私もOKだと伝える
賃貸会社の人は若い新婚だと勘違いしてくれているのでその話に乗っておいた
周辺には徒歩圏内にスーパーもあり私の職場もそんなに遠くはない
とくには問題ないと感じたのでそこで周平は本契約を交わして即日入居可能となった
そこで、私と周平はそのまま中古の家電を求めブッ〇オフに向かう
そこで冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、掃除機とシングルベッドを購入
新居に運び込む
またホームセンターに行って布団一式に毛布二枚と4段チェスト、ハンガーラック、カーテンも購入して運び込み
家電の設置とベッドの設置やカーテンの取り付けも行って本日は自宅に帰ることにした
自宅に帰ると二人で荷物の整理と梱包を行う
二人とも衣類やノートPC、少量の書籍以外大して荷物がない
その他は整理して廃棄する
学校の卒業アルバムも教科書も・・・
私は本棚の隅に隠していた『ベッドで周平と撮った写真』と『朱音と三人で撮った写真』を持っていくつもりの小説に挟もうとしたとき、突然母が部屋のふすまの前から声をかけてきた
私はあわてて梱包に詰めた小説を探すのを止め、そこらの置き去りにする雑誌に写真を隠し母の対応をする
何事か聞こうとするとリビングで話すというので仕方なくついていく
どうやら周平には聞かれたくないようだ
話の内容はつまり
子供のころから親戚などから貰ったお年玉などは全て親で預かり貯金しておくと言っていたが、それは生活費に消えてもうない
親戚からの、私の高校・短大卒業の祝いと周平の高校卒業の祝いは現金で親で預かったが私の短大の授業料にお金がかかったのでその補填に貰うから私たちに渡さない
ということだった
私はむかむかした・・・
小さいころからの周平への扱いがなぜか酷いのは判っていた
暴力も振るわれていた
けれど私も暴力こそ振るわれていないが結局そんな程度なんだと今になって思い知らされた
この親・・・いや・・・この他人たちにとって私たちは単なる金のかかる邪魔者でしかなかったのか
中学生の段階でそれを悟り独立への道を進んだ周平は正しかった
そんな周平のおかげで私は短大に行けて、そして卒業できた
決してこの他人たちのおかげじゃあなかった
そんなことが判ると無性に悲しくなった
自分の存在を自分自身で否定するようだが、じゃあなぜこの他人たちは私たち子供を作ったのだろう
そんなに邪魔なら作らなければいいのにと思ってしまう
私はもうこの他人とは話したくなかった
「判った」とだけ伝えると
あの他人は・・・かつて母親だと思っていた他人は仕事に行くからと言い、その間に引っ越すなら家の鍵はポストにでも入れて行けとだけ言うと出かけて行った
その後ろ姿を見届け自室に戻り荷造りを再開する
もう可能な限り早くこの家を出たい
長居したくない
なぜかこぼれ出る涙を拭いながら私は残りの衣類を梱包に詰め、雑誌やその他をまとめて机の空いた引き出しに詰め込むと周平の部屋に荷物が出来たことを伝えに行く
ほとんど荷物が出来ていた周平は布団のたたまれたベッドの上で私を待っててくれた
私はそんな周平に抱きついて先ほどの話を周平にも伝えた
周平は黙って聞いていてくれて、話し終わるとため息をつき優しく抱きしめてキスしてくれる
「もういいよね・・・自由になろう・・・サチ」
「うん・・・」
「車を持ってくるから、サチは荷物の段ボールを玄関まで運んで?」
「うん、判った」
こうして私たちは鍵をポストに入れると家を出た
『写真』のことをすっかり忘れてしまったまま
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次回は「二人の愛」です
全話アップロード後の追加のため話数がおかしくなってます
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