第五十三話 花火デート

僕たちは今、花火大会の会場近くへと向かう列車の中にいる


サチは黒のプリーツハイウエストミニスカートに白のクロップドタンクトップその上から薄手のベージュのカーディガンをはおっている


僕はスキニージーンズに黒の無地のTシャツ


サチのミニスカートが異様に短く下着が見えたりしないのか心配なんだが、そこはサチも抜かりがない


じつは家を出ていつも通りの隣駅での待ち合わせで、あまりの短さについついじろじろ見てしまって

サチにそれを感づかれていた


「なになに?私のミニスカート姿に興奮しているの?」


「いや・・・誰かほかの男にスカートの中見られないか心配で・・・」


「あぁ・・・それなら大丈夫・・・」


そう言うと周りを見回して誰もこちらを見ていないのを確認すると

少しだけスカートをめくり・・・


「なっ・・・!なにしてんの!!」

慌てて止めようとすると


「大丈夫大丈夫!」

ニコニコ笑ってる

「ほら見て?一分丈のスパッツ履いてるから」


ああ、なるほど・・・

はやくしまいなさい


「安心した?」


「まあ・・・うん・・・」


「周平以外誰のことも見てないから安心してね!」

そう言いながら腕に抱きついてきて・・・


そして今は列車の中

もう間もなく会場最寄り駅に到着する


サチがはぐれたりしない様にしっかり手を握り混雑の中を進む


改札を出て会場までの道をサチと一緒に手を繋いで歩く


前方に花火大会会場の文字が見えてくる

そこには『有料観覧席のためチケットをお持ちでない方は入場できません』の文字が・・・


心配そうにサチがこっちを見てくる


「大丈夫」

というと入場口まで来たところで僕は財布からチケットを取り出し、係員に見せてすんなり会場内へ


「有料観覧席のチケットなんて買ってたんだ!」


「サチの誕生日だもんね」


サチがすごくキラキラ輝いた瞳をこちらに向けて

「うれしい」

「ほんとうれしい」

「周平・・・うれしいいよう・・・大好き!」

そう言うとサチが腕に強く抱きついてくる


そんなサチの頭をなでてあげると嬉しそうに

「えへへへへへへ・・・」

と照れている


そんなサチを連れて露店をまわり

お好み焼き二つとたこ焼きとペットボトルのお茶二本、ベビーカステラを買う


「フランクフルト欲しかったな・・・」


「やめなさいはしたない・・・」


「違うよ!ほんとに食べたかったの!!」


そう言うサチの口角が上がっている

ほんとにこの娘は・・・


有料観覧席に入ると既にかなり混んでいて二人でゆっくり座れそうな場所を探す


何とかゆっくりできそうな場所を見つけると

その場所でエアクッションを二つカバンから取り出すと空気を入れて膨らませる


一つをサチ、もう一つを自分の座る場所においてその上に座ると

露店で買ってきたものでちょっと早めの夕食にする


お好み焼きをひとつづつ食べて、たこ焼きをお互いに『あーん』をさせて食べさせあう


そんな食事を終えると、お互いに肩を寄せ合いもたれあいながらベビーカステラをつまんでゆっくりする


夕暮れ時・・・

夕日に照らされたサチの顔が赤く美しく染まる


サチはゆったりともたれかかりながら僕を見上げてくる


まわりにその他大勢がいるためそれ以上の・・・キスなどができないため・・・見つめあう以上が出来ない


サチの瞳がうるんでいる

僕はせめてそんなサチの肩に腕を回し抱き寄せる

サチがしなだれかかり胸に頬を当ててくる


八月の暑い真っ盛りなのにその中で二人にとって相手の体温は・・・やっぱり暑かった


少し濃厚に密着したが直ぐに元のようにもたれあうだけに戻った

そのまま、花火大会が始まるまでまったりと過ごしていた


~~~~~~~~~

次回は「花火の婚約」です

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