第四十九話 プールデート

七月の暑い日、サチの受験勉強と、僕の資格取得試験の合間に僕たちはプールに来た


自宅最寄り駅から列車を二度乗り換え一時間半、地元からかなり離れた遊園地併設のプール


流れるプールや波のプールなんかがある施設で


ここなら二人を知っている人にも出会わないだろうということで選んだ


入場すると、更衣室の前で別れて着替える

更衣室出口で待ち合わせているとサチが出てきた


白いビキニで

ブラの前がリボン結びでホルターネック

ショーツが両サイドリボン結びのローライズ


「めちゃくちゃかわいい・・・」

思わず言葉に出てしまう・・・


サチが真っ赤になりながら僕の手を取り

「早く行こう!」

とプールへと誘う


「行こう!」


僕はそう言うと一緒に流水プールへと向かい

サチと一緒に飛び込んだ


「ぷはっ!」

水面に顔を出すとすぐ隣で同じようにサチが顔を出す


顔面の水けを切るとお互いに見つめて微笑みあう


それから一緒に流れに身を任せて行こうかと思うと

サチが僕の腕をくいくい引っ張る


「どうしたの??」


サチは目立たない様に少し離れたカップルを指さす


そこには大きめの浮き輪につかまり流れていくカップルの姿が・・・

二人で微笑みあいながら何事か言葉を交わしあっている


「ああいう風にしたいと・・・?」


サチは大きくブンブンと首を縦に振る


レンタル浮き輪なんかあるのかな・・・

二人で探しに行ってみる


ほどなくしてレンタルはないけど売店があったので、少し大きめの浮き輪を買い

早速プールサイドで僕が膨らます


ハアハア言いながら膨らませていると

横でそれを見てるサチが大笑いしている


「ほっぺが膨らんで・・・真っ赤で・・・おかしいぃ・・・ぎゃはははは・・・おなか痛いよ・・・」


おい!

笑ってんじゃねーよ

こっちは必死なんだよ・・・


「あはははは・・・代わるよ・・・周平」


「ふぅーーーーありがと」


サチが浮き輪を受け取るとサチもほっぺを膨らまして・・・

確かに笑えるな・・・


でも、真っ赤になってるけどほとんど膨らんでない・・・


「サチ・・・やっぱり僕がやるよ」


「ふぅ・・・助かるよ・・・やっぱムリ・・・」


大笑いするサチの横で僕は浮き輪を膨らませ終わった


そして二人で流水プールに入ると浮き輪につかまって流されるまま過ごす


「おつかれさま周平」


「ほんと疲れたわ」

「サチ横で笑ってるだけだし」


「だってパンパンの周平のほっぺがかわいくて・・・」


ムウゥッってなってると急に肩に腕を回してきたサチが急接近してくるとチュッと軽くキスされた


そのまま抱きついて


「機嫌直してよ・・・」

「ごめんなさい・・・」

と上目遣いで見てくる


「むちゃくちゃかわいい・・・」


「ふえっ?・・・もう・・・大好き・・・」


「サチ・・・かわいいよ」


そのまま片腕にサチが抱きついたまま流されていった









プールで流されながら私は周平の腕にしがみついていた


なんだかすごく居心地がいい


でも、長いことプールに入っているため疲れてきた


「そろそろ、上がってお昼ご飯にする?」

周平はうなづいた


そこで私たちはプールサイドの休養スペースに行き、浮き輪を置いて場所を確保すると、私はバスタオルを取りにロッカーへ、周平はお昼を買いにフードショップへと向かった


私は女子更衣室の貸しロッカーから自分の荷物のバスタオルとパーカーを取り出すと、休養スペースに戻ろうと女子更衣室を出てプールサイドを歩き始めたとき急に声を掛けられた


「きみ、一人なの?」


声のする方に顔を向けてみると、おとなしそうな雰囲気の男性がこちらを見て立っている


無視して立ち去ろうとするともう一度


「そこの白いビキニのキミ、一人なの?」


「私のことですか?」


「そうだよ、僕も一人なんだけど、一緒に遊ばない?」

「一目見て奇麗な娘だなって思って」

「その水着もすごく似合ってて素敵だよ?」


「・・・」

「あの・・・ナンパならいらないです」

「彼が待ってるので」


そう言って立ち去ろうとするが


「本当に彼氏なんているの?」

「彼氏がいるならどうして更衣室の前で待ち合わせてないの?」

「そんな嘘までつかれて傷つくなぁ」

「僕のこと傷つけた責任取ってよ」


などと歩きながらしつこく食い下がってくる


休養スペースに近づいてくると騒ぎを聞きつけた周平がダッシュで来てくれた


ナンパ男と私の間に周平が割り込んで私の手をとり抱き寄せてくれる


「僕の彼女になんか用ですか?」


「お前誰だよ」


「この娘の彼氏」

話の通じないやつ?めんどくさ・・・


「邪魔すんなよ」


「他人の女に手え出すなよ」


「邪魔だって言ってんだよ、こんなモテなさそうな女に彼氏が居るわけねえだろ?」


そう言うと私に手を出そうとしてきたので、周平が私のことを身体の陰に隠してくれる


その騒ぎを聞きつけたのか、誰かが通報してくれたのか

警備員が駆け付けてくれて絡んできてたナンパ男を連れて行ってくれた


私は恐怖でブルブル震えていた

どうして男ってああなんだろ


私は周平にしがみつく

周平の胸に顔を埋めて深呼吸しているとなんとなく落ち着いてくる

落ち着いてくると、ナンパ野郎に言われたセリフが頭に蘇ってくる


『こんなモテなさそうな女』

なんか涙が出てきた・・・









僕は目の前でそのセリフを言われショックを受けた

『こんなモテなさそうな女』

こんなこと言われてサチ傷ついてないかな・・・


サチを見るとなんか涙をうかべてる


すぐにサチを抱きしめる

「サチ・・・大切なサチ・・・」

「もう大丈夫・・・サチをいじめる奴は居なくなったよ」

「サチ・・・大丈夫・・・大丈夫・・・」

「僕がそばに居るから・・・」

「サチを守るから」


サチは僕の胸の中で泣きやんで、頭をグリグリ押し付けながら甘えてきてた


「サチ・・・もう帰る?」


「うん・・・もう帰りたい・・・」

「ここ・・・嫌い・・・」


「うん・・・判った」

こうして僕たちの初めてのプールデートは後味悪い結末となった


~~~~~~~~~

次回は「海水浴デート」です

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