第四十四話 永久就職への進路
四月の僕の入学式よりも前に一度、僕とサチは今後の進路について相談した
というのも、高校三年のサチは来年以降どうするのか両親から聞かれるのは目に見えてる
また学校でも進路希望調査がある
そのためにも僕の計画とサチの進路を調整しておく必要があるから
「サチは僕が高校を卒業するまでの二年間どうするか何か考えてる?」
「以前両親と話した時に、短期大学に行くのはどうかな?とは聞かれている・・・」
「わたしも周平の高校卒業にタイミングが合うので好都合だから考えとくとは答えてるよ・・・」
「学費なんかは?・・・僕と違って出してもらえるか・・・」
「・・・」
「まあ・・・出してくれるとは聞いてる・・・」
「・・・」
「僕とは違うか・・・」
「・・・」
僕は気を取り直してサチに聞いてみる
「え~っと・・・で、短期大学に行くとしてその後は?」
「周平に永久就職・・・」
「へっ?」
「えっ?違うの?」
「いや・・・合ってるけど・・・」
「けど?」
僕の考えをサチに話す
「そのためにも家出なきゃだし」
「僕も就職するけど・・・一緒に地方に就職しようか?」
「いいけど、どうして地方なの?」
「だって家出るいい口実になるから」
「なるほど・・・」
「どこかあてはあるの?」
「うん、血縁関係者が居なさそうな△△県」
「△△県かぁ・・・行ったことないね・・・」
「人口もそんなに多くなくて、でも幹線鉄道沿いで街にも出やすくて、適当な田舎で、工業化が進んでて工場立地が多く、就職先に困らないかなと・・・」
「そこまで考えてるんだ・・・?」
「じゃあ、私は短大卒業したら△△県の地方自治体の公務員試験でも受けようかな・・・」
「△△県のどの辺りとか決めてるの?」
「□□市の辺りなんて幹線鉄道の主要駅や新幹線駅も近くて、でも県庁所在地からは離れてるから、ひっそり暮らすにはいいかなぁ?」
「じゃあ△△県□□市・・・?」
「周平の計画って、ひどく具体的なとこまで決まってるのね・・・?」
「まあ、いろいろ考えてネットで調べてね・・・」
「まあ、周平のことだから間違いないと思うしそれで行こうか?」
「就職先の選択なんかで、なんでそこなのか聞かれたら『一緒に暮らした方が家賃とかお得になる』なんて理由を使えるかな・・・?」
「あっ・・・もしかして使える?」
「周平屋・・・お主もなかなかに悪よのう・・・」
「おサチさんもお人がお悪うございます」
「ほっほっほっほっほっ・・・」
「へっへっへっへっへっ・・・」
「おバカ・・・」
僕とサチの謎テンションが上がってしまう
そこから軌道修正するようにサチが真顔で聞いてくる
「で・・・その次は?最終目的の周平が大好きな北海道?」
「うん、△△県□□市で二年ほど準備して一気に行方をくらますつもり」
「そうしてそこでサチの永久就職が完成する寸法・・・」
サチの顔が一瞬輝いて
「なる・・・」
「でも、それだったら短大行って公務員になっても意味ないような・・・」
とサチが普通の疑問をはさむ
「僕の考えてるのは、苦労のわりにつまらない理由だけど・・・」
「まさか、行方不明になるつもり・・・なんて疑いを持たれないためのカムフラージュ・・・」
サチは納得顔でうなづく
「まあ・・・一理あるか・・・」
「短大行って公務員なったのに、最初から二年で行方不明になるつもりとは普通考えないかな・・・」
僕の中の疑問を聞いてみる
「ところで専門学校って選択肢は?」
「あぁ~~~っダメダメ・・・」
「あの人たちにとって『大卒』がステータスだから・・・」
「でも『短大卒』じゃん」
「なに?四年制行って欲しいの?」
「違います・・・ごめんなさい・・・・」
早々に無条件降伏する
「周平も、親も納得できる短大で経営学の学部がある短大があるからそこを進路希望に書こうかな・・・」
「あっ・・・場所はね・・・周平の高校のすぐ近くなんだ・・・へへっ」
「なにこの娘・・・無茶苦茶かわいいんですけど?」
サチが真っ赤になりながら僕の胸を叩いてくる
『ポカポカッ』って音が鳴ってそう・・・
「かわいいかよ・・・」
あっうつむいて動かなくなった・・・
抱きしめると
「ひゃうっ」
変な声が出る
そのままサチの腕が僕の背中にまわりこんでぎゅってしてくる
「進路希望の第二と第三は『周平に永久就職』って書く・・・」
やめなさい恥ずかしいから・・・
っていうか・・・もう最初っからどこ行くか決まってたんじゃね?この娘
僕の高校の近くなんて・・・無茶苦茶かわいいよ
うん・・・かわいい
最高の彼女だよ・・・
サチなりにいろいろ考えて、あとはその考えを補強する理由付けが欲しかったんだ
決してブラコン・・・げふんげふん・・・恋人のそばに居たいだけが理由じゃあないんだ
さすがサチ・・・
~~~~~~~~~
次回は「就職の先輩」です
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