自由を愛した(悪く言えば自分勝手な)オーストリア・ハンガリー帝国の皇妃エリザベート(愛称シシィ)の陰に隠れた姉ヘレーネに光を当てた稀有な作品です。彼女のことは、皇帝フランツ・ヨーゼフとの見合いの席での悲劇ぐらいしか今や一般的には知られていないかと思います。皇帝が本来の見合い相手だったヘレーネに見向きもせず、妹シシィを見初めたことは、彼女にとってとてつもない屈辱だったと同時に、自立して生きることなど考えられない当時の王侯貴族の女性として将来への不安でいっぱいだったでしょう。その彼女の心境と恋心が史実に沿いながら巧みに描写されています。落胆と屈辱からどうやって幸せな結婚に繋がるのか、続きが楽しみです。