第10話



 「久しぶりだな、透子」



 火事かと思って、電話ボックスに近づこうとした時だった。


 トントンと肩を叩かれる。


 ビックリして後ろを振り向いた。


 振り返った先には、スズがいた。



 その時は一瞬誰かと思った。


 当時、スズの家の引っ越しの関係で彼女とは小学校以来会っておらず、連絡もとっていなかった。


 だから、まさかと思って目を擦った。


 スズな訳がないと思い。



 「あそこには近づかない方がいい」



 意味がわからなかった。


 スズが「何」を言っているのか。


 どうして近づかない方がいいのか。


 聞くと、さらに意味不明なことを言ってきた。



 “あそこは汚染されている”


 “免疫を持っているやつじゃなければ、立ち入れない“



 そう、注意してきて。



 「汚染されてるって?」


 「”妖怪”って、聞いたことあるでしょ?」


 「は?」


 「まさか、知らない?」



 妖怪は知ってる。


 オバケみたいなやつでしょ?


 私は首を傾げていた。


 何で急に妖怪なんて言い出したのか、わからなかったから。



 「日本じゃ妖怪って呼ばれてるけど、海外じゃ違う呼び方をされてる。例えば、「悪魔」とか」


 「はぁ…」


 「あの黒い“煙”はね、妖怪が巣食ってるからだよ。多分、電話回線を棲家にしてる」



 …はい?


 頭が真っ白になる。


 久しぶりに会えたと思ったら、変なことばかり。


 おちょくられてるんだと思った。


 揶揄うなら揶揄うで、もう少しマシな冗談にしてよ。


 軽くあしらおうと思いながら、腕を組んだ。


 どうせ、思いつきのネタかなにかでしょ?


 全然面白くないんだけど?


 ほとんど顰めっ面だった。


 真面目に聞くつもりはなかった。


 昔から、冗談ばっかり言う子だったし。

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