デビルバスターズ
第5話
街の坂道を駆ける音。自転車に2人。前方には伊豆の海。真っ青な、陽だまりの午後。
「レッツゴー!」
地元に帰ってきたスズと2人、学校の登下校の道を突っ走る。
世界は4月10日と、西暦、2025年。
今、自分がどこにいるのかを探して空を見る。
私たちの頭上に通り過ぎていく一本の飛行機雲を目で追いながら、その雲が向かっている方角を指差して、
「飛ばして飛ばして!」
と背中越しに訴えかけた。
私の言葉に呼応してぐんぐん加速していく自転車。
「しっかり捕まっといて!」と元気な声で、スズはペダルを漕いでいた。
今日がなんの日か、それを考えるのも億劫で、寝癖ボーボーの髪をシャワーで流す。
顔を洗い、新しい制服を身にまといながらリュックサックを背負い、玄関先で「行ってきます」と母さんに言っている自分が、「今日」のものとは思えない。
記憶の片隅で何度もフラッシュバックする。
自分がいたはずの世界や、「時間」が、すぐ目の前にあったということを。
熱海市の海沿いにある高校の校舎は、春先に入学したとは思えないほどに懐かしい。
2人乗りは禁止されているから、先生に見つからないように途中からは徒歩で歩く。
見つかったら透子が罪を被ってよとスズは言うが、自転車の所有者はあんたなんだから、全面的にあんたが責任を負ってよね。
毎朝、私の家に迎えに来るスズが、私が寝ている部屋めがけて「おい、起きろ!」と訴えかける。
それは今日も同じだった。
最初は何事かと思ったが、今ではすごく快適なデリバリーサービス=配達業者と化している。
スズ曰く食後の運動にハマってるようで、ご飯を食べた後は少しでも体を動かして、摂取したエネルギーを筋肉に還元したいと言っていた。
朝はマックやタコベルに立ち寄りながら、豪快に朝メシを楽しむらしい。
しかしそれだと1日の摂取カロリーが異常なことになってしまうので、通学の時間を利用して自転車を爆走させれば、少しはマシになるだろうという計算だった。
バカなのかバカじゃないのか。
ま、私にとっては都合が良いから、なにも言わないけど。
それにしても毎朝どっかに立ち寄ってメシ食うとか、金持ちすぎない?
私はハンバーガーセットを頼むのでさえ躊躇してしまうのに…。
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