第153話 聖女リリアン様によしよしされる
目が覚めると、よしよしと撫でられていた。
「目が覚めました?」
可愛らしい声に顔を上げると、同じベッドに大変可愛らしい少女が寝ていた。
「おはようございます。リリアン様」
あの後、公爵家に戻ると言ったが、結局リリアン様のお部屋に泊まってしまった。聖女様の私室でお泊りとは、私も出世したものだ。
「みっともない姿をさらしました」
目元がまだ重い感じがする。
リリアン様を見たら、感情が溢れてしまった。年下の少女相手に泣き付くとは、情けない。
「ふふ、わたくしはリラに甘やかされてばかりでしたから、いつか私がリラの頭を撫でられる機会を待っていたのですよ」
冗談めかしてリリアン様が言う。
「それに、リラがレオンと婚約破棄をしたくないことがよくわかりました。リラにとって望まない結婚であれば、婚約破棄の後はわたくしの庇護下にと思っていましたけれど、レオンと結婚したいのであれば、私はそちらの方向で、全力で推しますわ」
リリアン様がそう言ってくれたが、どうだろうか。聖女様の権限は大きい。だが、私のためにそんなものを使って欲しくはない。
「……いえ。国王陛下も王妃様も、今回の功績を評価してくださった結果です。元とはいえ男爵家の娘、貴族としての責務は理解しています」
そう、頭ではわかっているのだ。
跡目を継いだわけでもない元男爵令嬢が準男爵から伯爵位へ一足飛びに階級を上げると言うのだ。英雄のような扱いだ。それを無碍にはできない。
まあ、結婚しなくても、適当に養子を迎えてもいい。それに、あの領地、あの貯水池を溜められる者はあまりいないだろう。私の代だけの焼け石に水のようなものだから他の対処方法も考えないといけない。いっそ、水を溜められたものを次のライラック伯爵にするとでもすればいいか。
「リラ、あなたの諦めの良さは知っています。マリウス殿下との婚約破棄は元々決まっていたと聞きましたが、他の方の時にも、このように涙したことがあるのですか?」
リリアン様にそっと目元を拭われた。
婚約するような歳になってから、大泣きしたことはあったろうか。この前の魔力暴走もどきの時は、魔法封じの効果もあって水が止められなかった感もある。
「……」
あの時涙が止まった理由を思い出して、そっと毛布を被りなおした。
「リラ、りぃらぁ、あなたが納得しても、私は絶対に婚約破棄を認めませんからね!」
隠れてしまったので少し大きな声でリリアン様が言う。
「……でも、どうしようもないことです」
これまでも、婚約破棄をしたいと言われた時、私にはどうしようもできないことだと受け入れてきた。今回もそれと同じだ。事情が変わったのだ。仕方ない。
「レオンが法律に詳しい方に相談をするというので、マリウスがこちらに来てもらうように呼び出してくださいました。法律はまだお勉強していませんが、プロの方ならば何か方法をご存じかも知れないではないですか!」
「……法律?」
どさくさとはいえ、口づけをされたのを思い出して赤面していたが、そんな言葉を聞いて顔を出した。
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