第131話 リラ・ライラックの能力
リラ様の指示に従い、一緒に土を掘ります。護衛でもあるのですから、本来は正しい行いではないでしょう。けれど、鬼気迫る顔で自らシャベルを差し込むのを見て、手伝わない選択はできません。
最初に名乗りを上げた子供は、驚いた顔ですごい勢いで掘っていきます。私もすぐに理由が分かりました。まるでケーキをすくっているように、柔らかく軽いのです。
「リラ様は、何をしたのですか」
「話しかけないで、集中が切れる」
いつもと違い、ぶっきらぼうに言うリラ様が、どれだけの魔法を行使しているのか、考えただけでもぞっとします。
それと同時に、可能性が見えてきました。
「リラ様っ、他の方も手伝うように依頼をしました。レオン様は、生きておられるのですね」
「早く!」
セラフィナ様が、何人かの男たちを引き連れてきました。嫌そうな顔をしていましたが、手伝いを始めると進み具合に唖然としています。
「崩落がないように魔法で支えています。土にも魔法がかけられていますから、進む先は柔らかい状態です。掘る者、運ぶ者を分担してください」
リラ様の代わりに指示を出す。
人数が増えると、進むスピードが格段に上がりました。
「あたしの旦那が、埋まってんだ! あんた、どこに人が埋まっているかわかるんだろう! あたしの旦那も助けておくれよ!」
ひとりの中年の女性が泣きながら掘り進める穴に入り懇願する。それに、リラ様が酷く冷たい視線を向けました。
「私が頼っても、一人しか手を貸そうとはしなかった。あなたは、ここの方でしょう。なら、私なんかよりもたくさん手伝ってくれる人がいるじゃない。よそ者の貴族に頼らないで」
リラ様の言葉とは思えない台詞に息を飲む。
「り、リラ様、他に生きている方の場所をお教えいただけませんか。大体の場所だけで構いません」
セラフィナ様が懇願すると、リラが嫌そうなため息をついた。
「わかりました。地図を」
手伝いを連れてきたセラフィナ様の願いで、リラ様が持ってきた地図にぱっと水跡を付けた。数はわずかに三つだった。
「これだけ……ですか」
「死体の場所は他にもあるわ」
言うと、ぱっと数えきれないほどの印が浮かびます。
「ああ、一つ目の死体が出るわ」
短く、呟いた視線の先には、腕が出てきました。
「っ」
息を飲むセラフィナ様とは対照的に、リラ様はじっとその先を見ています。
「生きている可能性がある方たちの元へ、採掘を始めましょう」
逃げるようにセラフィナ様が女性を連れて洞窟から出ていく。
「近くを通る場所にある亡骸だけでいい、一緒に回収をさせてくれ。せめて、家族のもとに返してやりてぇんだ」
手伝いに来た男の一人が、頭を下げる。また足蹴にするのではと不安になったが、リラ様は小さく頷いた。
「……そのために別に人が入るならば、可能な限り場所は教えるわ」
遺体を掘り起こすための作業員を別にすることで、リラ様が許可をする。採掘するものがへそを曲げて放棄されては困るという判断だとわかる。
救助のために助ける者たちも、リラ様の協力が必要だと判断したのだろう。
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