31_誰の仕業

——————————

香奈さん、終わりました。それより、響さんの事説明してください。

——————————


 僕はホテルから少し離れた公園で、香奈にメッセージを送った。場合によっては、秀利に連絡を取って、仕返しをすることまで考えている。


——————————

探偵からも連絡あったよ、お疲れさま。響ちゃんの事って何?

——————————


——————————

とぼけないでください。響さんがホテルの前で立ってたんです。僕と秀利さんと響さん、3人を知ってるのは、あなただけだ。

——————————


——————————

ちょっと落ち着こう、佑くん。

私が佑くんと仲間割れするような事して、メリットある? 最初に聞くけど、偶然じゃないのよね? ホテル入る前に見られてたとか?

——————————


 香奈のメリット……確かに、それはそうだ。


 だけど、僕たち3人を知っているのは、香奈しかいない。


——————————

偶然では無いはずです。ホテルの玄関、真正面に立っていましたから。

響さんが、大山田駅に用事があることも考えられません。

——————————


——————————

ちなみに、秀利は響ちゃんの事知らないの?

佑くんは秀利に、どこまで佑くんの事知らせた?

——————————


——————————

響さんの事は、一言も言ってません。僕の事は、居酒屋で働いているって事くらいです。居酒屋の名前も教えていません。

——————————


——————————

本名は? 伊藤佑っていう

——————————


——————————

出会ったときには、佑としか言いませんでしたが、伊藤っていう名字もどこかで話したような気はします……

——————————


——————————

バカねえ……私に実家の情報まで掴まれたの、忘れたの? そんじょそこらの金持ちとは違うのよ、私たち。まあ、説明してなかった私も良くなかったかもだけど。

あとは響ちゃんか。何かあるでしょ、スマホ覗かれたとか。

——————————


 そう言えば……


 1回目のホテルに行ったとき、響からメッセージが届いていた。


——————————

好きなの? 嫌いなの? どっち!

——————————


 このメッセージが、スマホに通知として表示されていたはずだ。発信者、『響さん』という名前と一緒に。僕が時間を掛けてシャワーを浴びていたときなら、十分に見る時間はある。


——————————

香奈さん、すみません……

響さんの名前、スマホの通知で見られた可能性があります……

——————————


——————————

あらら、私と使っているアプリ以外は通知切ってなかったんだ……

まあ、佑くんの本名から割れたのか、もしくは誰かに後を付けさせたのか、とにかく響ちゃんまで辿り着いたんだろうねえ。

——————————


——————————

確かに、言われてみれば僕が甘かった気がします。

疑ってしまって本当にすみませんでした……

——————————


——————————

OKOK、もういいよ。響ちゃんの事に関しては、力になれないけど頑張って。

秀利に関しては、ここからは私の番だから。メッセージを送る回数は激減すると思うけど、心配しないで。私からメッセージが届かなくても、連絡してこないこと。

ちゃんと、お金の約束は守るから。じゃあね、佑くん。

——————————


 秀利は、響からの通知メッセージを見て、僕たちが恋人同士とでも思ったのだろう。そして香奈が言うように、何かしらの策を使って響まで辿り着いた。


 響へのメッセージには、ホテルでの事も伝えていたはずだ。そうで無ければ、あんなリアクションを取るはずが無い。僕はホテルから出てきただけなのだから。


 だが、今となってはどうでも良いことなのかもしれない。


 誰の仕業だったかなんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る