18_誘い

「具体的に言うと……ホテルとかですか?」


「そ、そうだね……この辺りにはそういうの、沢山あるから」


 香奈との計画では、今日はランチまで。ホテルへ行くのは次の予定だった。香奈の性格を考えると、計画通りに進めた方が良いと思う。なにより、僕も心の準備が出来ていなかった。


「すみません……もう少し秀利さんの事を知りたいって言うか、色々準備したい事なんかもあるので……心の準備なんかも含めて……」


「そ、そうだね、ごめん、唐突にこんなことを言って。……俺、いい歳してこういうの本当によく分からなくて。まだ知り合って、そんな経ってないのにね……」


 秀利は困ったような笑顔を浮かべ、そう言った。


「次は……そういう事もあるかも、ってつもりで会いに来ます。……それでもいいですか?」


 秀利は一瞬、真顔になり、真意を汲むと笑顔に変わった。


 一番の難題だった、ホテルへの誘導。幸いなことに、秀利の方から誘いを掛けてくれた。



***

 


 秀利とは、2時間ほどファミレスにいた。


 正直、そこまで会話が弾むわけでも無い。ただ、どんなつまらない話題でも、それなりに楽しく広げてくれた。社長という立場上、普段から色々な人と会話をしているからだろうか。帰りの車内で、香奈にメッセージを送った。


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お疲れさまです。先ほど、ファミレスを出ました。次回はホテル行けそうです、秀利さんの方から誘ってくれました。

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おー、凄いじゃん! じゃ、私も証拠揃えるのと、探偵の手配に進むね。ホテルに行って貰うのは、早くても2週間後かなあ。準備に時間が掛かりそうなら、追って連絡する。それと、秀利にメッセージを送るときには、ホテルってワード入れておいてくれる? その方が探偵にも説明しやすそうだから。

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分かりました。

ちょっと先の話になりますが、僕がホテルで秀利さんの事を拒絶したら怒ると思いますか?

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んー、無いと思うけどなあ。でも、1回目のホテルは次に繋げないといけないから、ある程度我慢してくれる? 2回目は怒らせちゃってもいいけど・笑

秀利、子供の頃から何でも与えられて育ったから、ああ見えてワガママなところがあるのよ。こっちがガツンと言うと、何も言い返してこないけどさ・笑

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 香奈の性格なら強くも言うだろう。もし僕がキツい事を言ったら、秀利はどんな顔をするのだろうか。


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不思議に思う事があるんですが、秀利さんは僕との事が香奈さんにバレたらどうしよう? とか考えてないんですかね。結構、大胆だなあって思って。

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夜さえ帰ってくれば、セーフだとでも思ってるんじゃない? あと、佑くんが男子だから、ごまかせるって思ってる所もあるかもしれない。

それよりもさ、必死なのよ彼。ネットでしか会えなかった理想の子が、目の前に現れたんだから。全部用意されたものとも知らずにね・笑

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 相変わらずの香奈の性格に、寒気がした。だが、心の内がどうであれ、計画に参加している時点で僕も香奈と変わらない。僕だって立派な共犯者なのだ。


 あともう少し。あと2回、秀利と会えば僕の役目も終わる。正直、ホテルの中でどんな時間を過ごすのかと考えると不安になる。


 だが、あと2回。


 あと2回だけだ……

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