第四弾 皆、有馬記念と年末ジャンボに夢中であることを忘れてはならない

 そこかしこにある注意書き「※個人差があります」はその言葉の通りだったりする。「察する」能力には個人差がある。そう考えるのは私自身が察しが悪い人間だという自覚があるのと、自分の意志を他者に伝えることが苦手なティーン時代を過ごしたからである。

 相手が分かっていると思い込んでいて実は分かっていないことは、案外たくさんあるものだ。「私はこうしたい、こうありたい」と、はっきりした言葉で相手に伝えることはけっこう大切だと思う。

 そもそも字を書いてみようと思ったのも、声に出すことが苦手ならばせめて文字で伝えられないだろうかと考えたからだ。決して特技では無かった。今も根拠の無いナゾの向上心にかこつけて、意地になって続けているというわけだ。

 とにかく私はどうにかして、自分の気持ちや考えを言葉にしなければと考えた。だから人一倍、自分の意志が相手に伝わる時の喜びがいまだに大きいのかもしれない。会話が成立するだけでも嬉しいというのは、少々変わっているだろうか?


 いつの日かジェンダー的な話題で意見を求められた時に初めて私は、「そういえばあの時こう言われたんですけど実はこう思っていたんですよ」と今日忘年会で考えたことを打ち明けるだろう。

 相手が興味を持っていなければ、せっかくの激重感情でも響かない。この人は何か一生懸命熱く語っているけどちょっとよく分からないなあ、そんなことより有馬記念と年末ジャンボで頭が一杯なんだよな、と思われている可能性が高い。

「分かってくれない」はそうして生まれるように思う。伝えたい相手にだって準備が必要なのだ。数年、あるいは十年以上かかる場合だってある。

 聞く耳がチラ見えした時がチャンスだ。そうすれば相手も聞き入れてくれることが多い。そしてその時のために私は日々こうして考えを整理し、相手に伝えるべき言葉を模索している。淡々と弾を仕込んでいる。

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