第85話 ゲヘナプリンセスVSバーサーカープリンセス

閻魔優子えんまゆうこ目線



 咲め。

 バーサーカープリンセスに変身しおった。

 しかも抜刀しておる。


 ならば……


「刀を持て!」


「ははっ」


 ザッ、と。

 瞬時に家臣2名がその場に現れて


 我に一振りの打ち刀を差し出して来た。

 前に記念写真を撮るときに錬成させた一品じゃ。


 我はそれを手に取り。

 我は懐から、暗黒のガラケー・ゲヘナホンを取り出し。


 片手で上下に展開し、片手で変身コードを入力していく。


 5・8・7


『Standing by』


 流れる独特な電子音声。


「変身! 地獄ゲヘナプリンセス!」


 我はゲヘナホンを高く掲げ、その言葉を叫んだ。

 それと同時に


『Complete』


 我は光に包まれ。

 その光が消えたとき。


 我は暗黒のプリンセスに変身していた。


 変身を終えた我は刀を抜き放ち。


 そして最後の仕上げとして、我は空いた左手で唇を撫で、紅をさした。

 死してなお桜色……


 そして我は宣言した。


「我は邪鬼滅殺の使徒、ゲヘナプリンセスじゃ!」




 双方名乗りが済んだので、死合いがはじまった。


 バーサーカープリンセスは八相。

 その構えから当然の如く間合いを詰め、我に袈裟切りを繰り出してきおった。


 我は身を捻り、最小の動きでその斬撃を躱し。

 躱しざま、上段に構えた我が一刀をバーサーカープリンセスの絶対急所である頭部を狙い振り下ろす。


 バーサーカープリンセスはそれを躱さず……いや、躱し切らず。

 首を捻り、何故かそれを肩で受けおった!


 当然のことながら、我が斬撃には闘気が乗っておる。

 ゆえに、鉄身五身が無効化されるのだが……


 我が刃はバーサーカープリンセスの右肩に食い込み、その腕を半ばまで斬り落とす。


 これで右腕が使えなくなり、勝負あった……!


 そのはずじゃった。


 ……なんと、そのバーサーカープリンセスの肩で半ば切り離された腕が……


 みるみる繋がり一瞬遅れたが、そこから逆袈裟で斬り上げてきおった!


 我は驚愕し、大きく跳び退いてそれを躱した。


「……なんと。驚いたぞ」


「初代様、流石ですね」


 驚愕した我に、不敵な笑み。

 バーサーカープリンセス・阿修羅咲。

 当代の阿比須族滅流継承者。


 ……なんとも。

 頼もしいというかなんというか。


「面白いではないか……もっと我を愉しませるのじゃ!」


 我は刀を正眼に構え、興奮のあまり震えが起きてくる自分に悦びを感じた。




 デウスプリンセス、ヒューマンプリンセスめ。

 我の軍門に下って家臣になったと見せかけて、バーサーカープリンセスの情報を我に渡さなかったな。

 再生能力など、伝えるべき需要事項に違いあるまいに。


 ……この程度、独力で攻略できぬ者など主君では無い。


 そういう心の表れか?


 フフ……長いものに巻かれるわけではない。その程度、見事攻略して見せろ。

 我らの主君なら。


 ヌシらの気持ちがそういうことなら、見せてやろうぞ……


 我は、自分の口元に笑みが浮かぶのを抑えられんかった。


 ……スゥ、と我は息吹を吸い込み。


 喉にゲヘナの力を集中させる。

 させながら、同時に構えを脇構えとした。


 ……これは牽制では無い。

 必殺じゃ。


 ……喰らうがいい。


「プリンセスヘルクライ!」


 我がすきるしゃうとで特殊技能プリンセススキルが発動する。


 我が声帯を通したゲヘナの力が、音波に破壊的威力を付加し、道路のアスファルトを吹き飛ばし、抉り散らす。

 前に花蓮お姉ちゃんのお友達相手にやったときとは比較にならぬ。

 本気のプリンセスヘルクライじゃ!


 バーサーカープリンセスはこれは受け止めきれぬと判断し、地を蹴り横に逃げるが、遅すぎた。


 プリンセスヘルクライの効果範囲から逃れきれなかったバーサーカープリンセスの左腕が破裂して吹き飛んだ!


 バーサーカープリンセスはそれを意に介さず、再生しようとするが……


 それが一瞬の隙になる。


 我は踏み込み、脇構えから必殺の胴薙ぎを繰り出した。


「阿比須族滅流! 腰斬!」


 我が一刀はバーサーカープリンセスの胴を切断し、上半身と下半身を泣き別れにさせた。


 そして


 宙を舞ったバーサーカープリンセスの上半身を、我は首で掴んで宙吊りにし、宣言する。


「……勝負ありじゃ」


 ボトボトと出血しながら、上半身のみのバーサーカープリンセスはその我の勝利宣言を聞き


「……初代様、甘いですね……私の特殊技能プリンセススキルの再生能力を舐めないで下さい……失った下半身くらい再生して……」


 不敵な笑みを浮かべるが、我は


「……服は再生しないぞ? この意味が分からんか?」


 この一言。


 この一言でバーサーカープリンセスは目を見開き、真っ赤になり、涙を浮かべた。

 気づいたのだ。


 ここで下半身を再生すると何が起きるのか。


 ……ふふふ。

 自分の恋人持ちということの弱みを甘く見たな?


 見よ!


 男がいっぱい集まってきておる!


 ここで下半身を再生すれば……見られてしまうぞ!?

 愛しい恋人以外の男に!?


 すっぽんぽんの下半身を!


 お前はそれを耐えられるのかな?


 フフフ……!


「ま……参りましたぁ……!」


 泣きながら敗北を認めるバーサーカープリンセス。

 我は哄笑しながら、その上半身を下半身の方に投げる。

 勝負がついたなら、許して遣わす。

 もう二度と我に逆らうな! 良いな!?


 そう、視線で言いながら我が勝利の高笑いを続けていると。


「……そこまでよ!」


 ……もうひとつの、聞き覚えのある声が聞こえて来たんじゃ。

 それは……


 2人のセーラー服JC。

 1人はボブカットで大きな目が特徴的。

 鍛えているスラリとした体躯が魅力の女子中学生。


 我が義姉……花蓮お姉ちゃん。


 そしてその隣には……


 丸眼鏡で背が低めの三つ編みおさげ女子。

 花蓮お姉ちゃんのお友達の国生お姉ちゃん。


 2人は我を強い視線で見つめながら……こう言った。


「今度はお姉ちゃんがあなたをワカらせるよ!」


 そしてそれぞれの六道ホンを構えた。


 ……面白い!

 来るがいい! 花蓮お姉ちゃん!

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