第86話 リベンジ!

 優子……あなたをワカらせるために、沖縄から戻って来たよ。


 沖縄は暖かくて……11月でも海水浴が出来たんだ。

 常夏の土地だからね!


 とっても楽しかった!

 また行きたい!


「花蓮さん……ゲヘナプリンセスは恐ろしく強い……!」


 上半身と下半身をバラバラにされつつも。

 なんとか切断面を合わせて復活しようとする。


 私はそんな咲さんを見つめて


(咲さん……挑んだんだ。勝てるかどうか分からないから放置するって言ってたのに……)


 一度屈した咲さんが、立ち上がったこと。

 咲さんは、勝てるかどうか分からない相手に挑んだんだ。


 ……すごいよ。


 守りたいものがあったんだよね。きっと……


「気をつけて……」


 私は咲さんに頷いた。


「花蓮お姉ちゃん……もう左腕は治ったんじゃな? 良かったではないか……」


「おかげさまで」


 ニヤリと嗤う優子に、私は強い視線を向ける。


「優子……知ってる?」


「何を? 花蓮お姉ちゃん……?」


 意を決して、私は


「姉より優れた義妹なんて居ないんだよ?」


 姉妹マウント。

 思い知らせてあげるよ……!


 お姉ちゃんは義妹より偉いんだってことを


 懐から取り出す六道ホン。

 この日を待っていた。


 あの日の屈辱を晴らすこのときを!


 腕を折られて悔しかった。

 春香ちゃんを蹴とばされて超悔しかった。

 春香ちゃんの協力で殴り倒せたのに、効いていなくて絶望した。


 あの苦しみ……ワカらせてあげるから!


「花蓮お姉ちゃん! それは敗北フラグじゃ!」


 嘲笑う優子。

 私は無視して親指で番号をプッシュする。


 4・5・9


『Standing by』


 電子音声が流れる。

 それを聞きながら、高く六道ホンを掲げた。


「変身! 六道シックスプリンセス!」


 私の叫び。

 それに六道ホンが反応し、電子音声が鳴る。


『Complete』


 光に包まれ、変身する。


 黒い姿の魔法少女……ヘルプリンセスに。




「あはははっ!」


 優子……ゲヘナプリンセスは嗤う。


「我が花蓮お姉ちゃんの相手をしなければならぬ理由は我には無いぞ」


 嗤いつつ、指をパチンと鳴らした。

 すると


「優子様!」


 2名の裏切りの六道プリンセス……デウスプリンセスとヒューマンプリンセスが優子の傍に出現する。


「……デウスプリンセス……ヒューマンプリンセス……」


 天野先輩に……飛馬先輩……!

 悲しいけど、寝返ってしまった人たち。


 とても立派な人たちなのに……!


「ヘルプリンセスを任せる。我は一度倒した相手には興味がない」


「お任せを!」


「りょーかいや!」


 神の力を操るデウスプリンセス。

 人間の力を操るヒューマンプリンセス。


 1人でも一筋縄ではいかない相手。

 そんな相手を……!


「ヘルプリンセス!」


 そこに。

 変身を完了した春香ちゃん……白に近い灰色の六道プリンセス……ビーストプリンセスが現れる。


「ビーストプリンセス!」


 私たちは見つめ合った。

 ビーストプリンセスは私をしっかりと見つめながら


「デウスとヒューマンは私が相手をするから、ヘルプリンセスはゲヘナプリンセスを!」


 春香ちゃん……!

 分かった……!


「……お願いね! ありがとう!」


 感激で泣きそうになったけど、今はそのときじゃない。

 私は駆け出した。


「させないわ!」


「そうは問屋が卸さへんで!」


 私の前に回り込もうとする2人の六道プリンセス。

 だけど


 そんな二人を、恐ろしい量の蜘蛛の糸の奔流が阻んだ。

 それを躱しつつ、弾かれたように視線を投げる2人。


 そこには……


「ヘルプリンセスの邪魔はさせない……! 私が相手だッ!」


 そこにいたのは……


 変身した春香ちゃんの上半身。

 巨大な蜘蛛の下半身。

 肩から生えた2つの蛇の首。

 そして……蛇の頭部の代わりに存在している狼の頭部。


(プリンセスウルネークパイダーコンボ……)


 鉄身五身を習得した春香ちゃんは、生命体としての位階を上昇させた影響で、究極の特殊技能プリンセススキルを発現させていた。


 今の春香ちゃんは……


 鋼鉄をも噛み切ってしまう狼の顎を備えた、伸縮自在の蛇の首2つ。

 10指から発射できる……鉄より強い蜘蛛の糸。使い方によっては切断糸としても使用可能な蜘蛛の糸。

 そして口から吐き出す、黄金をも溶かしてしまう強力な猛毒。


「かかってこい人間どもッ! 5秒で沈黙させてくれるわッ!」


 眼鏡の奥の目を、白目を黒く、黒目を深紅に変色させた春香ちゃんが、天野先輩と飛馬先輩にそう宣言した。


 任せたよ!

 信じているからッ!

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