第83話 我、暴れる。
★
我は自分の服を得た。
ここからやっと、我は前に踏み出せる気がする。
あれから。
国会前で、良識ある民草が「テメエふざけんな」と憤慨するような、くだらぬ「でも」は起きておらぬし。
次の段階に駒を進めようぞ。
「格闘士を自衛隊に入隊させようと思うのだが。無論、最下層の最前線兵士として」
我は家臣2名の前で、己が考えを披露した。
我が死んでおる間に、この国は一度戦争に負けておるが、当時であっても格闘士が日本軍の最前線兵士であったなら、軍部の采配ミスも問題にはならず。
あのような悲惨な一般民草の犠牲は無かっただろうと愚考するのだ。
どうじゃ?
そう提案するとデウスプリンセスが
「大変なご慧眼と思いますが……」
そう言って、一枚の
そして、読めとばかりに突き出してくる。
しょうがないので、我は文書に目を通した。
そこにはこう書かれていた。
無理矢理力でワカらせようとしてはいけないタイプの格闘士
①極大空手の使い手
②中国拳法の達人
③合気道の達人
④自衛隊員
⑤ロシア人
⑥空道使い
⑦ヤクザ
積極的に力でワカらせても大丈夫なタイプの格闘士
①伝統派空手の使い手
②ムエタイ
③小林流拳法
④立ち合い前に防具着用を持ちかけてくるタイプの中国拳法家
……なんじゃこれは?
そう思った。
で、それだけだったら「なんじゃこれは。意味が分からぬ。却下じゃ」で終わりなのだが。
その
御名御璽がされておった。
帝の文書……!
我は絶句する。
これは……無視できん。
我とて逆賊の誹りは受けとうない。
それでも、どうしても納得のいかないことはあったので。
いくつか問うたわ。
「極大空手とは何じゃ?」
「国内最大手のフルコンタクト空手の名称であります。優子様」
デウスプリンセスの返答。
その集団を力でワカらせてはいけない理由とは?
「弱いのか?」
そうするのが正視に堪えないほどの実力差。
誰だって、幼子や女が圧倒的強者に一方的に踏みにじられるのは良しとはせんわな。
我が思いついたのはそれだけだった。
その理由としては。
そういうことなのか?
すると
「強いです。弱いなんて言ったら怒られます」
「誰に?」
「神に」
~~~~ッ??
分からん。
けど。
これが
仕方ない。諦めよう。
しかし……そうすると。
ワカらせてもいいと書いてはあるが、伝統派空手は事実上危険な相手になる。
相手が極大空手を装って、我の襲撃を躱す恐れがあるからだ。
それがあるから、伝統派空手を狙うのは危険であると言わざるをえまい。
中国拳法家も危ないな。
防具着用を持ちかける、とあるけれど。
そんなもの、立ち合ってみぬと分からぬし。
それ以外で、どうしても納得できないのは……
「なんでヤクザがアカンのじゃ!? こいつら反社じゃぞ!」
腕を振り上げて、我がギャオオオンと騒いだら。
「しょうがないでしょう。大人気なんですから!」
わがまま言うな、と言わんばかりに一喝された。
反社が人気じゃと!? この国はダメになりつつあるのか!?
我は絶望的な気分になった。
我が死んでおる間に、一体この国に何が起きたのじゃ!?
……自衛隊の格闘士配属による抜本的強化。
これが成ったら、次は人心を改革せねばならぬな。
忙しくなるぞ……
我はこれから待ち受ける難題の数々を思いつつ
とりあえずの行動方針として……
日本全国のムエタイと小林流拳法使いをワカらせて回る。
これを計画し、行動開始した。
……出陣じゃ!
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