第32話 私も負けてられないな

 仲間たちが次々妖魔獣を浄化している。

 私も負けていられないな。


「私は神の視点を持てる優秀な人間! 鬼熊は人の命より価値がある! 私の優秀さについてこれないヤツは黙ってろマヌケめッ!」


 私が受け持つ鬼熊妖魔獣は、サブマシンガンで武装していて。

 それを私に撃ちまくりながら迫って来て、爪攻撃を繰り出してくる。

 人の腕と熊の腕。2つあるから成立する四手の猛攻。


 私は足運びと受けの技でそれを捌きながら


「あなたの視点が神の視点であることの根拠は何!?」


「決まっている! 私は他人の立場でモノを考えているからだ!」


 鬼熊妖魔獣は横薙ぎの爪攻撃。

 私はダッキングでそれを躱す。


「他人の立場とはッ!?」


「決まっている! 鬼熊の立場だッ!」


 サブマシンガン。

 銃弾は


「阿比須真拳奥義! 鉄身五身てつみごしん!」


 少し痛いけど、回避せずに受けきり


「何で人間の立場に立たないのッ!? あなた人間の世話になって生きて来てるはずだよねッ!?」


 銃弾チャージの隙を付き、間合いを詰めて、サブマシンガンを蹴り上げて取り上げる!


「それは私が頼んだことでは無い! それに、自分の立場だけ守ろうとするなど、自己中の極み!」


 サブマシンガンを失ってしまったけど、まだ爪がある。

 爪攻撃を左右から繰り出してくる。


「自分のことばかり主張するなど恥ずかしいと思わないのかッ!」


 左右からの爪攻撃の後。

 今度は右腕で上から叩き潰すような引っ掻きを繰り出した。


 それに私は


「プリンセス等活地獄!」


 足に等活地獄のチカラを込め、円月の軌道を描く蹴りで、気の刃を生み出し鬼熊のその右腕を斬り飛ばす。

 ……別に等活地獄は手刀でしか出せないわけじゃないんだからね!


「グアアアアアッ!」


 右腕を失い、悶え苦しむ鬼熊に。


「人間が人間の主張して何が悪いんだッ!」


 私は一喝した。


「そ、それが自己中だと言うのだ! 逆切れをするなガキッ!」


「ガキはあなただよッ!」


 ……ヤツの胸の人間の顔を見れば分かる。

 ヤツは追い詰められている。


 私は言ったよ。


「その年齢まで生きてきて、何を犠牲にしても守りたいものが人間に1人も居ないあなたは子供そのものだよッ!」


 すると


「ダ……ダマレー!」


 目が釣り上がり、硬直。

 正気を失った顔になる。


 ……今こそ浄化のとき!


 右腕を失いながら、残った左手を振り上げ襲って来る鬼熊妖魔獣。


 私は大きく息を吸い込み、そして


「プリンセス叫喚地獄!」


 私の喉に籠った地獄のチカラ。

 私の特殊技能プリンセススキルの叫びに伴い、地獄の波動が発生。


 大食い会場のアスファルトを抉り、背後の垂れ幕を吹き飛ばし、並んでいた椅子が残らずひしゃげ、破壊された。


 直撃を受けた鬼熊妖魔獣は吹き飛ばされ。

 見れば分かると思うけど……


 全身の骨が砕け

 目玉が破裂し

 鼓膜が吹き飛び

 

「あ。あ、ああ……」


 脊椎動物から軟体動物に変異して、ぐにゃぐにゃのカラダを晒していた。


 ……終わりだね。


「プリンセス焦熱地獄」


 もはや動けなくなった鬼熊妖魔獣に、私は右手で生み出した地獄の炎を浴びせ。


 ……炎を浴びた瞬間、骨の無い身で鬼熊妖魔獣の身体が跳ねた。


 浄化するため、骨も残さず焼き尽くす!


「アツイイイイ!!!!アアアアーッ!」


 つんざくような断末魔の叫び。


 そして、爆散した。


 ……これで浄化完了だね!

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