第28話 まあ悪い人間じゃないよね

阿修羅咲あしゅらさき目線



 私は阿修羅咲。

 17才の高校2年生。

 そして智くんの恋人だ。


 私の家は阿比須族滅流の継承者の血筋で。


 私自身も一応、何をやってもお咎めなしになる程度には強い。


 ……その気になれば「国会中継での政治家の答弁にムカついたので、国会議事堂に凸して該当政治家の前歯を折ってやろうと思ったのでやってみた」これが実行可能で成功してしまう人種なのよね。


 世界にはこういう人種が3人居るんだけど。

 私はその1人。


 でもまぁ、その力をカサに着て、好き勝手生きてやろうとはしてないけど。

 そうすると、残り2人の「何をやっても許される人」が私を止めに来る可能性あるし。

 あと、誰にも愛されなくなる。


 それは嫌。


 だからせいぜい、小学生の恋人の智くん相手にイチャイチャしても逮捕されない程度にしか、使ってない。


 私が六道プリンセスになったときも、そうだった。

 いつもの通り、智くんとデートしてたら、通りがかった教会で結婚式をしていたので。


 見学させて貰った。


 参列者に新郎新婦の内訳を訊いたら


「看護師の新婦と、新人医師の新郎のカプです。阿修羅様」


 という返答が返って来たので。

 職場恋愛の結果かな、と見守っていた。


 そのときだった。


「ちょっと待った!」


 そう言って、70過ぎの老人がその結婚式場に乗り込んで来た。


 最初、何事!? と思ったんだけど。


 ……その老人は、新婦のストーカーだったみたいで。

 老人が入院中、新婦が優しくしてくれたのを「ワシに惚れたからだ」とありえない勘違い。

 で、花嫁を奪いに来た、らしい。


「本当はキミはワシの妻になるべきなんじゃ!」


 だって。

 当然、その場で新婦はそれを拒絶。

 すると老人は包丁を持ち出した。


「よくもワシを弄んだなこの毒婦があああ!」


 そのとき。


 空間が歪んで、なんか男性が出てきて。

 その老人にチカラを与えて。


 老人、その場で怪物化。


 私は阿修羅の名を継ぎ、阿比須族滅流の使い手としてその怪物の討伐を買って出たんだけど。

 そこで私たちは、ケンジャキに会ったんだ。


 そして智くんと2人揃って六道プリンセスになって、活動を開始したんだけど。

 ……まさか今日、他の六道プリンセスに会うなんて。


「助太刀します!」


 ヘルプリンセスを名乗ったこの子……

 名前は知らないけど、阿比須真拳の使い手なら、名字は多分閻魔だな。

 閻魔大王之介の子供に違いない。


 いきなり前歯を折りに来るあたり、異常性を感じる子ではあるけど。

 多分悪い人間ではないよね。


 だからまあ


「そっち任せた!」


 受け持ってた2体の妖魔獣の内、1体を彼女に任せた

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