第22話 謎の少年

阿比須町あびすちょうの町民の皆さん、今日はよくお集まり下さいました」


 マイクパフォーマンスしている主催者。

 痩せた眼帯のおじさんだ。

 赤いタキシードを着ている。


「毎年恒例大食い大会です。優勝者には皆様の税金から捻出した100万円の賞金を贈呈いたします」


 参加者がズラリと並んでる。

 若年層が多い。


 羽根のアクセサリーがついたリュックを背負ってる、ダッフルコートで赤いカチューシャの女の子とか。

 長い髪に赤いリボンをつけた、藍色ジャケットと黒スカートの少女とか。

 腰にロングソードを吊るした、紫リボンで後ろで長い髪をまとめた、女子高生とか。


 ……最後の人、なんで武装してるのかな?

 お役所の剣豪? 武芸者?


「100万円あったらボクの保釈金の借金を払えるよー!」


「……まだ50万残っている」


 ……ああ、あのロングソード女子高生警察関係者なんだ。

 バイトなのかな?

 羽根リュックの女の子、腰に縄がついてるのに今更だけど気づいてしまう。

 で、その縄の一端が、紫リボンのロングソード女子高生に握られている。

 ……つまり、あの子は犯罪者なんだ。


 一体何をしたんだろー?




 1回戦はたい焼きで。

 早食いで、たい焼き20個を食べきった人間が一抜け。

 それで先着20名。


 ……正直、たい焼きは量食べるの嫌だったから。

 このルールはありがたかった。

 だって太るもん。


 肉まんとか牛丼は、ほとんど白いからほぼカロリーゼロだけど、全体に色の付いているたい焼きはしっかりカロリーがあるから。

 女の子としては気にしてしまう。


 とりあえず20個。

 1分ちょいで食べて。

 咀嚼し、飲み込んで、一抜け。

 テーブルにあった赤いボタンを押した。


 余裕だった。

 1位通過。


 その次は、肉まん。

 20名が10名に絞られる。


 これは余裕……ではなかった。

 1位を逃したから。

 正直、油断してたんだと思う。


 ……私を抜いたのは男の子。


 顔つきが中性的だった。

 判断したのは、髪型。


 わりと長めなんだけど、ちゃんと男の子してる髪型で。

 そこでまあ、判断した。


 ……この大食い大会に小学生?

 そう……その子は小学生にしか見えなかったんだ。


 身体の造りはほっそりしてる。

 この大会に参加できる体型に見えない。

 半ズボンを穿いていて。

 そのふとももの肉付きがなんだかエッチ。


 ……この子……

 何者?




 そして。

 牛丼の早食いで10名が2名に絞られる。

 これには……


 私は本気を出した。

 絶対に通る気持ちでいかないと決勝を逃してしまう。


 だから、応援に来てくれた国生さんに、挨拶を返すこともせず、勢いのままかっこんだ。

 そしてノルマの5杯を空にする。


 ボタンを押した。


 ……どうだ!?


 私をさっき抜いた相手も……あの小学生の少年も押していた。

 この瞬間、決勝の出場選手が決まった。

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