第16話 これが畜生道の力だよ!

国生春香こくしょうはるか目線


「僕はバキ。冥府から来た妖精さ。僕は六道シックスプリンセスを探しているんだ」


 ……六道プリンセス?


六道りくどうの力を受け継いだ伝説の戦士の名称さ。キミはその1人なんだ!」


 大げさな身振りで私の有用性を主張してくる。

 この妖精。


「……それになれば、私も閻魔さんと一緒に戦えるの?」


 彼の主張を纏める。

 そういうことだよね?


 彼は馬面を縦に振った。


「ああ! それだけでなくあらゆる病気にならなくなるし、新陳代謝も一生落ちなくなる!」


 ……そんな特典もあるんだ。

 まあ、それは重要なことじゃないけど。


「分かった……なる。……私も六道プリンセスに」


 私はそう、自分の意思を示した。




 私の意思を確認し。

 バキは私に黒いガラケーを渡して来た。


 ……六道ホン。


 これが変身アイテムなんだそうだ。

 六道プリンセスの。


「さあ、僕の言うとおりにして変身するんだ!」


 ……目の前には、激高した妖魔獣の汚礼くんがいて。

 私に彫刻刀ミサイルを撃ち込んで、殺す気でいる。


 ……変身できないと、私、多分死んじゃう……


 だけど


 自分でも驚くくらい、怖くなかった。


 ただ、私も閻魔さんと一緒に戦える……!


 その嬉しさでいっぱいになっていた。

 だから落ち着いて、指示に従うことが出来た。


「まず、その六道ホンを開いて!」


 こうかな……?


 片手でパカ、と2つ折りになっている六道ホンを開く。


「そしてキー入力で、7940と入力するんだ!」


 言われた通り、私は親指で番号をプッシュした。


 7・9・4・0


 するとその瞬間


『Standing by』


 電子音声が流れる。


「そして六道ホンを高く掲げてこう叫ぶ! 変身! 六道シックスプリンセス!」


「変身! 六道シックスプリンセス!」


 私の叫び。

 それに、六道ホンが反応し、再び電子音声が鳴った。


『Complete』




 そして私は六道プリンセス……畜生道の戦士・ビーストプリンセスになった。

 分かる……今なら私……戦える!


「死ネ国生ォォォォッ!!」


 ハリネズミの針の部分に相当する部分が彫刻刀。

 そういう姿の妖魔獣に成り果てた汚礼くん。


 ……今、私が浄化してあげるよッ!


 全弾発射される彫刻刀ミサイル。

 その数……無数!


 間違いなく対象をハチの巣にする。

 それだけの数。


 だけど私は


「プリンセスクレインウイング!」


 バサッ!


 背中に鶴の巨大な翼を生やし、羽ばたき。跳躍と飛行能力の合わせ技で、それを全て回避した!


「ナ、ナニー!!」


 避けられることを想定してなかったのか、汚礼くんが動揺する。

 そこに私は羽ばたき旋回、急接近し


「プリンセス・スネークポイズンブレス!」


 私の口腔内部に畜生の力を集中させ、酸の息を吐き出した!


 ブオオオ!


 私の酸の息は、見えないと危ないのであえて紫色の色をつけている。

 私の吐き出した紫色の毒霧は、汚礼くんを包み込み、その目と肺を侵す!


「ウゲエエエエエ!!」


 目と肺を攻撃された苦しみで、汚礼くんは七転八倒する!


 しかし私の浄化技は終わらない!


「プリンセス・スパイダーウェブ!」


 私は汚礼くんに右手の人指し指を向け、そこから白い糸の網を撃ち出し、絡めとった。

 動けなくなる汚礼くん。

 必死で暴れるけど


 ……無駄だよ。


 その糸の網、鉄の数百倍強靭だから。


 終わりだ……


 クレインウイングを畳み、私は汚礼くんに歩み寄る。


 そして行動不能に陥った汚礼くんを見下ろした。


「や……ヤメロッ!」


 じたばたするけど、もう無理だ。

 ……今、浄化してあげるからッ!


 私は右手を掲げた。

 そしてその手を、獣の顎を思わせる形にし


 畜生の力を集中……!


 そのまま、本当の狼の顎そのものの形に変化させた!


 ……いくよッ!


「プリンセスッ……」


 汚礼くんの喉笛目掛け、まるで貫手を突き刺すように繰り出した。

 狼の顎に変化した私の右手を!


「ウルフファング!」


 繰り出した狼の顎の貫手は。

 まるで何の抵抗も無く、汚礼くんの喉笛を喰いちぎった!


「~~~~ッ!」


 喉笛が丸ごとなくなったせいで悲鳴もあげられず。

 汚礼くんは白目を剥いて力尽き、次の瞬間爆発した。


 ……浄化完了だよ!


 私はその爆発に巻き込まれないように、再び羽ばたき跳躍しながら、そう心で呟いた。

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