第13話 もう1人の六道プリンセス

「この世の中ハ間違ってル!」


 五味山妖魔獣がその多腕をメチャクチャに振り回して突っ込んで来た。

 素人丸出しの、身体能力に頼り切った勢いだけの突き。

 一般人なら脅威だけど、この私……ヘルプリンセスには通じない!


 私はその腕を避けながら、右の手刀に力を籠める。


 等活地獄の力を


 そして……


「プリンセス等活地獄!」


 ビャッ、と。

 剣術で言えば、逆袈裟の軌道で手刀を振り上げた。

 そこから放射された黒いエネルギー刃が、五味山妖魔獣の身体を斜めに両断する!


「アギャアアアア!」


 切断面から斜めにズレていく五味山妖魔獣。

 そしてそのまま倒れ伏し……


 爆散した!


 まず1!


「このクソアマがアアア!」


 そして私の背後から、九相妖魔獣が剣道の面打ちに忠実な動きで。

 背中まで振りかぶった太刀の一撃を叩き込んでくる。


 私はそれをくるくると身を翻して躱し、その背後に回り込む形で跳躍する。


 超大上段の一撃を躱され、つんのめる九相妖魔獣。

 それに私はそのがら空きの背後から。


 すでに左手にチャージしていた、「衆合地獄」の力を解き放つ!

 私は九相妖魔獣の背中に左手の平を当て、言い放った!


「プリンセス衆合地獄!」


 その瞬間

 普通の100倍以上に増強された重力が、九相妖魔獣の身体を圧し潰す!


「ぐげええええええ!」


 数秒持たず、自重で押し潰されて

 肉と骨も分からないくらい平たくなる九相妖魔獣!


 そして爆散!


 これで2!


 最後は……!


 そして私が、最後の汚礼妖魔獣を浄化しようと振り向いたときだった。


「コノめがねザル! ぶっ殺シテヤルァァァァァッ!」


 なんと汚礼妖魔獣は、国生さんにその彫刻刀ミサイルの照準を合わせていた。

 汚礼妖魔獣は、国生さんを殺るつもりだ……!

 自分の彫刻を、残酷な理屈で全否定した国生さんがどうしても許せないのか。


 だけど……


 そんなこと、させないッッ!


 私はすぐさま、残った汚礼妖魔獣を浄化しようとした。

 だが……


 その足が、止まってしまう。


 見てしまったから。


 国生さんの……手の中に


 ……黒いガラケー


 六道ホンが握られていることに。


 私が見守る中。 


 彼女は六道ホンをパカッと開けて、キー操作する。

 そして


『Standing by』


 電子音声が流れる。


 そして彼女は覚悟を決めた表情で、六道ホンを掲げて、こう宣言する。


「変身! 六道シックスプリンセス!」


 彼女の叫び。


 それに、六道ホンが反応した。


 再び、電子音声が鳴る。


『Complete』


 そして彼女は、強い光に包まれ……

 次の瞬間、その場にもう1人のシックスプリンセスが誕生した。

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