第7話 可愛い義妹の救済ルートはありますか?
フィオナ・ハワード。
作中屈指の美少女(断言)にして、現在は恐れ多くも
可愛くていい子でチート級の魔法を扱える彼女だが、このままゲームの本編が進めば───確実に死ぬ運命を辿る。
「解決策············なくね?」
あれから十分ほどうんうんと考えていたが、フィオナを救うための方法が見つからず、完全にお手上げ状態だった。
フィオナの死亡ルート、その3つ目のルートに進めば彼女は必ず死ぬ。
いや、死なない方法が無いことも無いが、優しい彼女はその手段を絶対に取らないだろう。
フィオナの性格からして、実の姉である"アレクシア・ローレンス"を犠牲にするとは思えない。
なぜ俺がこんなにも悩んでいるのか。
それは、フィオナの、いや王家の血脈が関係している。
この世界の昔話になるが、かつて魔神がその猛威を振るっていた時代。
今では御伽噺として絵本で語られるソレは、実際に存在していた記録でもある。
魔神の軍勢に侵略され、滅びを待つだけだった人類の中から3人の人物が立ち上がり、魔神を封印する物語だ。
人類の怨敵である魔神を封じたその3人は、平民の勇者、エルフの聖女。
そして王家の賢者である。
この3人によって封印された魔神は、ジワジワと存在を削られて消滅する───はずだった。
はずだったのだが、なぜかちゃっかり封印を破って出てきている。そこら辺の設定はあまり深く考えていなかったのか、設定資料集にも深く書かれていなかった。そういうところだぞ開発者(呆れ)。
魔神の設定云々は置いておき、問題なのは封印した3人の英雄。
この3人の英雄だが、ロストメモリアルに存在だけ語られている女神から力を与えられ、"対魔神特効"とでも言うべき力を与えられていた。
ちなみにこの女神、ロストメモリアル本編ではあまり登場していない。
一応、医療施設でもある"神聖協会"が信仰していたのがこの女神だったはずだ。
この"女神"も設定資料集にあまり書かれていなかったので詳細はわからない。が、女神は魔神を憎んでいたらしいので、それが人類に力を与えた動機とかだろう。
とにかく、重要なのは3人の英雄が女神の力を持っていたということ。
対魔神特効とまで言われたその力、その中には無敵を誇る魔神を弱体化する力を当然持っていた。
──いや、違うな。
彼ら3人は、魔神を弱体化させるだけの力を与えられていたんだ。
代償は、使用者のその命で。
自身の命を代償に振るわれた女神の力は、魔神を『どうにか人類でも勝てる』レベルにまで引き下げることができた。
そりゃあ、仮にも神だからな。ゴリラとバッタで勝負して、バッタが勝てるかって話だ。
だが女神の力は、たった一匹のバッタを犠牲にすることで、ゴリラをカマキリくらいにはできた。
女神からしたら人間がたったの1人死ぬだけで魔神を滅ぼせるかもしれないのだ。そりゃあ、嬉々として自身の力を渡したのだろう。
だが、2人の英雄は魔神を完全に滅ぼす事ができず、封印することが限界だった。
ここでお気づきかと思うが、魔神を封印できたということは誰かが女神の力を使ったということである。
古の時代、魔神討伐に参加して自身の命を代償に魔神を弱体化させたのは、エルフの聖女だ。
弱体化した魔神に挑んだ勇者と賢者だが、たったの2人では死闘の果てに封印することが精一杯だったのだろう。
それでも、人類を滅亡に追いやっていた魔神が封印されたことで世界は平和となり───
────魔神との死闘で運悪く命を落としてしまったエルフの聖女、そして勇者と賢者の3人は絵本で語り継がれるほどの英雄となった。
その後、平民の勇者と王家の賢者は婚姻を結び、古の魔神討伐に関しては王家だけが真実を受け継いでいくのでした。
魔神が封印された世界はハッピーエンド、めでたしめでたし。
────ハッピーエンド? クソみたいなトゥルーエンドだろこれ。
はー、ホント開発者、というか設定考えた開発陣はクソだと思うわ。
女神の力で魔神を弱体化させるだけなら、ぶっちゃけみんなで少しずつ女神の力を出して誰も死なないようにする、とかできたんじゃねぇの?
それを、『女神の力は命を代償にしなければならない』とかさぁ·········人の心とか無いんか^?
しかも勇者と王家の賢者。
お前ら、魔神を封印して後世に負の遺産として残すくらいなら、しっかりと倒しといてくれよ。
エルフの聖女1人の命で封印できるくらいの弱体化なら、勇者か賢者が女神の力をもう1度使えば倒し切るくらいはできたんじゃねぇの?
まぁ2人は愛し合ってましたから死にたくなかった、とかクソくだらん理由だろう。愛よりも魔神討伐を取れよ。エルフの聖女も浮かばれねぇよこれじゃあ。
まぁ過去の魔神討伐云々は設定だからと割り切れるのだが、問題は現代に蘇ってしまう魔神討伐にある。
さて、おさらいの時間だ。
魔神を討伐するためには弱体化が必須で、弱体化の力を扱えるのは女神の力を渡された者、もしくはその血脈である。
古の3人の英雄、そのうちの1人であるエルフの聖女は死んでいるから血脈は受け継がれていない。
残った平民の勇者と王家の賢者は、婚姻を結んで王家だけに血脈が受け継がれている。
つまり、王家の血脈を受け継いでしまったフィオナは、女神の力を扱えるということ。
封印を破って復活してしまう魔神。
そして、生来の"魔力供給過多"を治してもらい、魔神討伐の旅に加わるフィオナ。
もう一度言おう。
フィオナ・ハワード、3つ目の死亡ルート。
彼女は、必ず自身の命を代償に魔神を弱体化させる役目を背負った、救済ルートの存在しないヒロインである。
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