第22話
「グルォォォオオ」
飛び掛かってきた毛むくじゃらの狼型モンスター。
レッサーウルフの攻撃を避けながら前進。
狙いは後ろに控えているゴブリン。
一瞬で距離を詰め、手にしたアウトドアナイフを喉元へと突き立てる。
薄くマナを
小鬼は緑の血をまき散らしながら後ろへと倒れていく。
オレが隙を見せたと思ったのだろう。
背後から飛びかかってきたレッサーウルフに、容赦なく後ろ蹴りを放つ。
放たれた蹴りは、大きく開かれた口元へと吸い込まれ――
踵に仕込まれた鉄板が、剥き出しの牙を粉砕した。
頭部への強烈な一撃。
レッサーウルフは、壁際まで吹き飛ばされ。
ビクビクと
モンスターに普通の武器では、致命傷を与えることはできない。
なのになぜ、オレの攻撃が必殺の威力を持っているのか?
それには明確な理由があった。
マナはただの身体強化を超え、無限の可能性を秘めている。
探索者たちが命を懸けて研鑽を重ね。
10年後の世界では、数多の
先ほど使用したのは、その一つである
武具にマナを
消費したマナの量に応じて威力を底上げできるため、使い勝手もいい。
だがコントロールが難しく、失敗すると武器が爆散してしまう諸刃の剣。
習得が難しいため、現状この
それはダンジョン攻略における、大きなアドバンテージとなるはずだ。
詳細に説明するのは難しい。
分かりやすくゲーム風に言うなら……
マナを取り込むと、全体的なステータスとマナの上限値がアップする。
保有するマナを活用することで、
消費されたマナは時間経過で回復するが……
使い果たすと気絶してしまう。
もちろん魔法のように何でもできるわけではなく。
基本、マナは直接触れている物にだけ作用する。
もう少し都合良く使えてもいいのでは?
そんな風に考えもするが、現実はそう上手くいかないものだ……
モンスターたちがマナの粒子となって消えていくのを見届けた後。
オレは周囲に視線を向け安全を確認する。
「敵の気配は……ないな」
何度か分かれ道を通って来たが、基本通路は一本道。
ある程度マナを吸収し強くなったため、もう
前後だけ確認すれば安全を確保できるため、思いのほか順調に探索ができている。
「しかし……どういうことだ?」
このままでは計画に支障が出てしまうかもしれない……
そんな不安に、思わず眉根にしわが寄る。
探索が順調なのは悪いことではない。
だが、あまりにも順調すぎる。
オレが不安を感じる原因。
それは遭遇する敵の少なさにあった。
モンスターとの戦いは命がけ。
本来なら戦闘回数が少ないことは歓迎すべきだ。
しかし今は事情が違う。
役割分担のされた仲間。
かつてのようにパーティーを組んでいれば、特に問題はないだろう。
だが今のオレは、ソロでダンジョンの攻略を行わなければならない。
現状でも、ゴブリンやレッサーウルフであれば圧倒できる。
だがこの程度の実力では、後に待ち受ける脅威には通用しない。
今後の計画を円滑に進めるため。
そして更なる力を得るためにも……
可能な限り多くのモンスターと戦い、マナを吸収する必要がある。
出現したばかりとはいえ、間引きのされていないダンジョン。
大量のモンスターがいるとは思っていなかったが……
いくらなんでも、数が少なすぎる。
どうも嫌な予感がする。
オレの知らない何かが影響を及ぼしている……
そんな可能性を考えずにはいられない。
今まで以上に、気を引き締めた方がよさそうだ。
降ろしていたバックパックを持ち上げながら、そんなことを考えていると。
突如、空気を震わせる鋭い音が響き渡った。
それはこの国には似つかわしくないもの。
非日常、映画の中では当たり前の――乾いた銃声だった。
――――――
あとがき
――――――
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