第3話:パーシモンの館。

人間の女の子みたいになってしまったノワール。


女の子みたいじゃなくて完璧にどこからどう見ても女の子。

頭に猫耳がついてることと、お尻に尻尾が生えてること以外は・・・・。


ノワールが変身してしまってからは普通の猫と違って僕と同じ生活を送るように

なった。


普通に米のご飯を食べて・・・コーヒーは飲まないからミルクとかホットミルク

などを好んで飲んでる。


あと好物は「豆腐丼」に「しらす丼」に「まぐろ丼」に「納豆」に「カレー」に

「ハヤシライス」に「チャーハン」に「パスタ」に「オムライス」に「ラーメン」

あと回転寿司に焼肉・・・あと「ざるそば」と「刺身」も大好き。


アルコール類は全般苦手・・・甘酒くらいはいけるかな。

だから僕とちょいと晩酌付き合ってよなんてことはできない。


服は主に僕が着てるものが多いかな、体が華奢なノワールには少しブカそう。

そのうち女の子らしい服も買ってやらないと・・・。


さてどこからやって来たのか分からない謎なノワール。


昔の文献を探ってみたところ猫又なる妖怪のことが載っていた。


《妖怪のひとつで年月を重ねた猫が化けたもの》

《人間に化ける能力を持つものもいて尻尾が二股に分かれているのが特徴》


ノワールは擬似的に女の子に化けてるとは思えないけどな。

それに尻尾だって一本だし・・。


《性格は人間に似て多種多様》

《凶暴で人畜に害を為す猫又も居れば元の飼い主に恩返しをする穏やかな

性質の猫又も居る》


ノワールは後者だな。


《中国では「仙狸せんり」という猫の妖怪が伝えられている》

これは年を経た山猫が神通力を身につけた存在であり美男美女に化けて人間

の精気を吸うとされる》

《日本の猫又の伝承はこの仙狸を起源とする説もある》


狸だって?・・・うそっぽいよな・・・しかもノワールは妖怪なんかじゃないだろ。

まあ、ノワールと関係があるのかどうか知らないけど・・・これってあくまで

伝承だからな。


どっちにしてもノワールは僕の世界の猫じゃないのは確か・・・。

やっぱりあの島のどこかにあるって言う異世界との境界線を抜けて、こっちの

世界にやって来たってことで納得するしかないかな。


いくら考えたって、謎は謎・・・これが現実なんだから・・・。


で、そんなノワールは買ってやった人間用のベッドですやすや寝てる。

新しい家族が増えるとなにかと出費が重なる。


ノワールのことがきっかけってわけじゃないけど僕はこのさい、今の持ち家を

売っぱらって田舎に引っ越そうかと思った。


この家はもともと両親が建てたもの。

僕の両親はとっくに亡くなっていてこの家は両親が生前時に僕が受け継いだ。

僕に兄弟はいないからね・・・親戚も遠くに住んでるし・・・ノワールが来る

までは前に飼ってた猫ちゃんとふたり暮らしだった。


親が建てた家を売っばらうのは別に抵抗はない。

家自体はもう古いから資産の対象にはならないから高くは売れないだろう。

でも土地の方は高く売れたらその資金をもとに田舎に家を買ってノワールと

のんびり暮らそう。


で僕は早速、不動屋さんにお願いした。

それから一週間ほどしてでめでたく家と土地は処分できた。


僕はノワールを連れて電車に揺られて田舎に古民家物件を見に行った。

はじめて乗った電車にノワールはテンションが上がっていた。


そうだね、猫だった時には公共機関には乗れなかったもんね。

これからはバスにだって電車にだって乗れるよ。

駅弁も食えるよ。


田舎の不動産屋さんで、いくつかの物件を見せてもらった、

その中にこれはって家が一軒見つかった。

僕はその建物を一目見て気に入った。


それは古ぼけてはいたけど、日本家屋じなく明治時代にでも建てたかのような

洋館だった。

その屋の持ち主さんは、お年寄りで家を管理できず老人養護施設にお入り

になったんだそうだ。


それで空き家になった。

これは住んであげないと勿体無い。

僕はその洋館に住むことを決めて、迷わず契約書に判を押した。


一応ノワールにも聞いてみたら「いいよ」って。


それほど大きくはないがガーデニングや家庭菜園できるくらいの庭がついていた。

それと庭の隅に大きめの柿の木が植わっていた。


だから近くの民家の人たちからはこの洋館のことを「パーシモンの館」って

呼ばれてるんだそうだ。

不動産屋さんがそう教えてくれた。


だから僕もこの洋館を「パーシモンの館」って呼ぶことにした。


周りは緑も多いし民家もさほど密集してないし・・・ある意味隔離されていて

ノワールにとっても最良の環境だと思った。


南側の六畳の部屋を書斎として使っていたのかとっても落ち着いていい感じ。

僕はそこにパソコンを持ち込んで仕事をすることに決めた。

しかも南向きの窓がひとつあって日中は、ひなたぼっこでもできそうな太陽の

日差しが差し込んでいた。


あとここから街へ降りるのに、とりあえず足がいるって思ってパーシモンの館を

買った資金の余りからノワールとタンデムできるよう125ccクラスのスクーターを

買おうかと思ったんだ。

でもよく考えてみたら・・・ノワールのデカい耳。

ヘルメット被れないよな・・・被れないこともないかもしれないけど被ったら猫耳

痛いよな・・・ってことでスクーターはボツになった。


その変わり車が一台はいるよな・・・ポンコツでもいいから・・・。


つづく。










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