第2話:謎の猫ちゃん。

僕はなにげな〜くノワールが寝てるベッドの横を通りがかった時、

ふとノワールを見てめちゃビビって後ろに倒れそうになった。


猫のベッドで寝てたはずのノワール・・・なにがどうなってそうなったのか

は分からないけど・・・そこに大きめの裸の女がベッドからはみ出すように

寝ていたからだ。


さてさて目の前の光景をどう理解すればいいんだろう。

ありえないようなことが起こったことは分かる。


まじでありえないだろ、こんなこと。


そしたら今までスヤスヤ寝てたノワールがごそごそ起き上がってきた。


「まずい・・・いくら猫だからって・・・裸はまずいよ」

「なんだよ・・・猫の部分はといえば、耳?・・・とそれから尻尾か?

あとは女じゃないか・・・」

「顔にも体にも毛がないんだから人間の女だろ?しかもすっぽんぽんだし」


「やっぱりまずいよ、って起き上がる前に服を着せなきゃ」


僕は慌てて洋服ダンスからジャージの上下を引っ張り出して来て

ノワールのところに持ってきた。


ノワールは寝ぼけたみたいに僕を見つけると挨拶した。


「おはよう」


「しゃべれるんだ・・・なんとなくそんな気がしたけど・・・」


「おはよう・・・」


「あ、おはよう・・・ノワール?これどうなってる?」


「よく寝たね・・・私」

「本当の私の姿になったんだ」


「ほんとの姿・・・それが?」

「それがノワールの素顔?・・・なかなか可愛いし・・・」


「私、子猫の時ね・・・おにぎりの匂いに誘われて向こうの世界から

出てきちゃったの 」


「おにぎり?・・・あ、それ島で僕と会った時だ」


「で?出てきたって?・・向こうの世界って?・・どの世界?」


「ずっと向こうにある世界」


「そうか・・・あの島・・・なんか異世界との境界線になってるって

話だよな・・」

「ノワールは別の世界の猫なの?」

「UFOに乗ってやってきたとか、エイリアンとか異星人とよりは信憑性が

ありそう」


「あ、僕・・・涼平りょうへい・・・」


「知ってるよ・・・ここに着た時から一緒に暮らしてるもん」

「名前くらい知ってる」


「ああそうか、初対面じゃないもんな」


「とにかくノワールはこの世界の猫じゃないんだ 」

「ノワールみたいな猫見たことないし、テレビでだって見たことない」


「そもそも猫って決めつけるのは間違いかもね・・・まったく違う生き物

なんじゃないの?」

「別の生物だと思えば、違和感もないんな」


「あ、待った・・・こっち向くなよ」

「起き上がってもこっち向くなよ・・・ジャージ自分で着れるか?」


着れるわけがない・・・。

着たことないんだから・・・着れるわけがないんだ。


しかたないから目を瞑る・・・と見えないや」


で、なんとかかんとか薄め開けてノワールにジャージを着せた。

ジャージを着たノワールはキッチンテーブルの椅子に座った。


耳も髪も尻尾も黒いし着せてやったジャージも黒い。


「さて、今更向こうの世界に返すったって・・・どうやれば?」

「手立てがないし、情も湧いてるし・・・」


「私、どこにも行かないから・・・あの時のおにぎりの味が私の記憶に

残ってる限り向こうには帰らないからね、涼平」


「ああ・・・そうか・・・おにぎりか」


「私お腹すいた」


「分かった・・・今キャットフードあげるから・・・」


「もうそんなもの食べないの、私」

「涼平と同じご飯食べるから」


「え?・・・50%オフの時、大量にキャトフード買ってるんだけど・・・」

「それからペットシートも・・・」

「それにさ・・・キャットタワーとか爪研ぎとかもういらないんだよな」


「邪魔なだけだし、ゴミだよな」


「ごめんね・・・」


「あ、いいわ・・・キャットフードとペットシートは近所の吉田さんとこの

メルちゃんにあげるよ」


「たぶん迷惑と思うけど・・・メルちゃんもうふたつとも持ってるよ」


つづく。




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