第27話 透子

悠の台詞で、恵梨香が固まった。横で見ててはっきりわかる。

普段暢気で明るい恵梨香が、動揺しながら言う。


「それ、ママのことかも……」


美冬が必死にかばう。

「そんな、教育委員会の女性係長なんて何人もいるでしょ、そんなわけないよ」


「教育委員会にはいるけどママの部署はそんないないよ、顔ぶれだいたいわかるもん。折り合い悪かったっていう人ママだったらどうしよう。言われてみたら人当たり悪いし愛想ないしツンケンしてるし、若い女の教師とかをいじめるまではいかないにしても冷たくしてたのかも。ママだったらどうしよう」


悠まで動揺してる。


「ごめん、もうホントごめん。わたしのくだらない好奇心でこんなみんなに嫌な思いをさせるなんて。わたし何もわかってなかった。知りたがるってことが、こんないろんなことを巻き起こすなんて。美冬にしてもすごく煩わせてしまって。いろいろ調べて聞いて回ってくれてホントにありがとう。

でも、もうこの話やめない?警察が自殺って言ってるなら、それはそれでいいんだよ。本の予約のこと、わかってたけど、わたしの馬鹿なこだわりでしかないんだから、もうやめよう、この話にこれ以上首突っ込むの。ごめんね恵梨香。恵梨香にこんな嫌な話きかせて不快にさせるつもり全然なかった。もちろん、千葉先生の話が勘違いとか別人とか関係ない話だとは思う。それでもとにかく、わたしには自分の好奇心より、恵梨香のほうがずっと大事だから」


泣きそうな顔で恵梨香が言う。


「ありがとう悠。でも、伊東先生の理由はともかく、ママが関わってるなら、この話はもうあたしとママの話になってるから。あたしは知りたい。このまま蓋をしてしまうなんて気持ち悪くて無理。あたし自身は伊東先生の話が知りたいっていうより、ママがどう関わってるのか関係してるのかしてないのか、聞かないといられないよ」


ふわふわ生きてると普通に楽しい。

でも、何か知ると、何かを知りたいと思うと、こんないろいろ波風たってしまうのかな、こんな普通の高校生のあたしたちでも。

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