含んだ甘さは切なくて
「俺はお前のことが…」
いつの事なのか私には分からない。
誰がそれを言っのかも分からない気がついた時には、私のある感情はピンク色のキャンディになっていた。
お客さんがやってきたと思ったら、そこには暗い顔をした
「秋月さん、どうぞ」
「…はい」
座るように促して私はココアを用意した。
今日は寒かっただろうから。
「今日はどうされたのですか?」
「…この前の結果なんですけど」
「ゆっくりで良いですよ」
「ありがとうございます…」
秋月さんの声は弱々しくて見ているこちらも悲しくなる程だった。
「私、フラれちゃったんです」
「…」
「頑張って可愛くして出かけて勇気を出して告白したら、他に好きな人がいるからごめんなさいって…頑張って努力した自分が馬鹿みたい」
彼女の胸にある淡いピンク色の感情が暗くなっていくのが分かる。
その時私は今だと思った。
「秋月さんコリウスの花言葉をご存知ですか?」
「…分からないです」
「叶わぬ恋」
「…今の私にピッタリかもしれないですね」
「かもしれないですね」
秋月さんの頭に私は手を置いた。
彼女は、何が起こるのか分からないといった様子できょとんとしている。
「その捨てそうになった恋心をください」
淡い光がお店の中を満たしていく。
そしてしばらくすると光は弱くなり消えて私の手の中に集まっていく。
その手には小さいなキャンディが握られていた。
「どうかしました?」
「…いいえ、何も秋月さん心は少しスッキリしましたか?」
「あれ?さっき悲しかったのに…なんでだろう?」
秋月さんから恋心を私は貰った。
恋心は無くしてもまた生まれる。
だから私はそれを貰っている。
秋月さんは晴れ晴れとした顔でお店を去っていく。
私はそれを止めることなく手を振った。
「手癖の悪い女」
「ユウさん酷いなぁ」
裏口からユウさんが不機嫌そうな顔をして現れた。
私が恋心を貰う度に彼は心底嫌そうな顔をする。
「結局それ食べるのに毎回渋って」
「そんな簡単に人の恋心を無くすのも抵抗感が」
「じゃあ飴玉以外にすればいいんじゃ」
「出来たら苦労しないのですよ」
私は大きくため息をついてテーブルに突っ伏した。
それを見てユウさんは、私の向かいの席にドカッと座った。
「この飴玉はお前が食べるの?」
「うん」
「食べたあとの副作用がしんどいってあんだけ言っても、ってことかよ」
食べたあとは胸が苦しくなる。
悲しみも一緒に流れてきて食べたあとは、四日長くて一週間はしんどい思いをする。
そんなことは理解している。
「食べるからそれ…ちょうだい」
「…ヤなこった」
ユウさんは、キャンディを自身の口に放り込んでしまった。
私は予想外の行動に驚いて、彼の肩を掴んだ。
「な、何して…!良いから早く出して?!」
コロコロと彼は呑気にキャンディを口の中で転がしている。
頑なに口から出してくれないことに私は焦りを覚えた。
「貴方が一番理解しているでしょう!」
「だから半分貰うんだろうが」
「どうして…」
「なんで俺がお前との縁を切らずにここにいるか分かるか?お前は俺をここに勘で来れる不思議な人だって思ってるんだろうけど違うからな」
ここに来ることのできる人は、どういう人かそれを考えれば自ずと答えは出てくる。
「なるほど想い人がいるってことですか、私で良ければお手伝いしますよ」
「…アホだお前はとんだ大アホだ」
突然暴言を言われたのですが、こういう時はどうしたらいいのでしょうか?
「私の悪口言ってる暇あるなら体調気にして欲しいですね」
「別に少しだけ頭がいたいだけ」
「ほら言わんこっちゃない!さっさと横になりなさいっ!」
私はユウさんの背中を押して私の部屋のベッドまで連れていく。
彼は大丈夫だとは言っているけど何かあったら怖いので休んでいて欲しい。
「…昔からそういうところは変わってないってことかよ」
ボソッとユウさんが何かを言っていたけど私にはそれが聞こえなかった。
「何か?」
「…別にお節介だなって」
私は、その言葉にムッとして掛け布団を彼に押し付けた。
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