第8話 恋が欲しいんじゃない by小野寺志乃

恋とは、

例えば伝えられなくて、

例えば言葉にならなくて、

例えば認められなくて

無自覚のまま素直でなくなってしまう


ならば愛とは、

例えば受け入れられて

例えば言いたいことを言ってもらえて

例えば祝福してもらえる


でも恋と愛とは対義じゃなくて

愛は恋の延長線上

それが正か負か、

どちらにのびているかわからないけれど

世の中には伝わらない愛も、名状しやすい恋もあるのだろう


だからこそ

人は恋を育み愛を培う

恋無くして愛は無く、

愛無き恋は空虚なものだ


だというのに

想いを伝える形にはいろいろあるのだと

今日も今日とで自分に言い聞かせている―――――








「はぁ~」


 私は何をするというのでもなく、強いて言うなら考え事をしながら、枕を抱えてベッドで横になっていた。


「なんだかなぁ」


 好きだとか嫌いだとか、恋愛感情とか嫌悪感とか、そういうのを抜きにしても私と桜田君の間には何か距離がある気がする。

 ココロの距離だ。

 どんなに物理的にも感情的にも近づいたって、その勢いだけが収束して、想いばかりが発散し、振動する。

 どこか桜田君には”見切り”のようなものがあるような気がするのだ。

 どれだけ仲良くなってもそれ以上には進めない。いや、確かに進んでいるのだけれど、決して桜田君には到達しない。

 私が好きだと言っても届かない、桜田君が嫌いだと言っても離れない。

 その点で桜田君と神田君はそのベクトルが違うからかどんどんココロが近づいていって、親友に昇華しようとしている。でもそれは私の望むところではない。


 つまりは桜田君が変わるしかない。桜田君を変えるしかない。

 私は伝えることができない。受け入れることしかできない。

 手を差し伸べられるのを待つことしかできない。手を差し伸べさせるしかない。


 ―能動的に受動的な恋を演じるのだ―


 桜田君の中にある信条なにかを溶かすまで

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