第4話オフ会開けの配信

「そのハンドサインやめませんか?周りがめっちゃ引いていますけど…」

本日も彼女らは卑猥なハンドサインをゲラゲラと笑いながら披露していた。

もちろんゲーム内の出来事なのだが…。

「甘ちゃんは本当に初心だなぁ〜」

スギザキはボイスチャットを通して僕を誂うように笑った。

「これぐらいなんてこと無いでしょ」

ライ麦一番もなんてこと無いように声を発すると僕は苦笑するしか無かった。

「それが可愛いところなんだけどねぇ〜」

世界宇宙は僕に向けて好意を示すような言葉を口にするので再び苦笑する。

何故なら彼女らの姿を見てしまったので僕は接し方を忘れてしまったのだ。

「なんか今日の甘ちゃん…ぎこちなくない?この間のオフ会でもっと仲良くなれたと思ったんだけど…」

スギザキは少しだけ残念そうな言葉を口にして嘆息する。

「いや…仲良くなったと思いますよ…。ただどう接すれば良いか…」

「どうして?」

ライ麦一番も話に割って入ってくるので僕はなんと説明すれば良いのか困ってしまう。

「う〜ん。なんというか…少しだけ気まずさはあるというか…言葉にはしづらいです」

「何でかなぁ…」

ライ麦一番は再びその様な言葉を口にしては落ち込んだような態度を取っていた。

「でも別にマイナスなイメージじゃないんでしょ?」

世界宇宙が僕に向けて可愛らしく甘えるような言葉を吐くのでそれに同意するように返事をする。

「もちろんですよ。マイナスなイメージなんて…まるで無いです」

「だよね。分かっているよ。今はまだぎこちないだけだって」

「分かって貰えて光栄です」

「甘ちゃんのことは何でも知りたいから」

「そうですか…」

僕と世界宇宙が少しだけ良い雰囲気に包まれていると残りの二人からブーイングのようなものをもらってしまう。

「いちゃつくのやめてもらっていいですか〜?」

「二人きりの空気感作らないでくださ〜い」

その言葉に僕と世界宇宙は苦笑しつつ、そこから再びゲーム配信をして過ごすのであった。



配信が終わっても僕らの通話は続いていた。

「甘ちゃんは現状では誰が一番好きなの?」

スギザキは唐突にその様な言葉を口にするのでまたしても困ってしまう。

「強いて言うのであれば…で良いから」

ライ麦一番もその様に促すような言葉を口にする。

「そうですね…強いて言うなら…世界さんでしょうか…」

「やったぁ〜♡私が一番っ♡」

「強いて言えばですよ…。皆さん…同じぐらい好印象ですから」

「それでも宇宙ちゃんが一番なんだ…嫉妬しちゃうな…」

スギザキが少しだけ拗ねた様な言葉を口にする。

「仕方ないでしょ。初めから宇宙ちゃんは良い距離感保てていたから」

ライ麦一番は達観したような言葉を口にするとスギザキを慰めているようだった。

「まぁこれから追い越せば良いんだよね」

スギザキがそんな言葉を口にして、その後は馬鹿騒ぎするような通話を続けて一日を終えるのであった。

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