第5話Vサーバー閉鎖後
馬鹿騒ぎをする配信がいつまでも続くと思っていた。
しかしながらバーチャル配信者サーバーは期間限定だったため本日、それは閉じられるようだった。
「今日まで本当にありがとうございました。楽しかったです」
彼女らにお礼を口にするが受け入れてもらえないようだった。
「これで終わりなんて言わないでよ」
スギザキは少しだけ寂しそうな声音でそんな言葉を残す。
「そうだよ。冷たいこと言わないで?」
ライ麦一番も続けざまにその様な言葉を口にして僕は軽く困ってしまう。
「まだまだ私達の付き合いはこれからでしょ?幸いなことに全員が個人勢だし。好きに絡んで遊ぼうよ」
世界宇宙は僕に優しく手を差し伸べるような言葉を口にしてバーチャル越しでもわかるように微笑んでいた。
「良いんですか?」
何故か疑問形な言葉が口を吐くと彼女らは遠慮いらないとでも言うように何度も頷いていた。
「私達が甘ちゃんと一緒に居たいんだし」
スギザキは少しだけ照れくさそうに歯切れの悪い言葉を口にして僕も同じ様に照れてしまう。
「これは私達の総意だから。本心で甘ちゃんと一緒に居たいって思っているんだよ」
ライ麦一番も同じ様な言葉を吐いて誤魔化すように一つ咳払いをした。
「そうそう。またオフ会もしよう?誰も顔バレしていないんだから自由に外で遊べるでしょ?」
世界宇宙は僕を外の世界に誘うような言葉を口にすると何度か頷く。
「皆さんの輪に入っても良いんでしょうか?」
「もちろん」
「当然だよ」
「私達が入って欲しいって思っているんだよ」
三者三様の言葉を投げかけられて僕は軽く戸惑ってしまう。
だがその歓迎の言葉に了承の返事をするとここからも彼女らとの関係は続きそうなのであった。
バーチャル配信者サーバーが閉じられてから数日が経過していた。
僕はと言うと個人勢なため好きな時間に好きな配信をして過ごしていた。
本日はデビューから三年が経った記念配信ということで凸待ち企画を行っていた。
「いやぁ〜。三年ですか。信じられないね。最初の頃は本当に人気なくて…このまま続けて良いのか分からなかったんだけどね。どうにか生活できるような配信者になれました。これも全てファンの皆様の御蔭です。ありがとうございます。ということで今日は凸待ち雑談配信なんですけど…誰か来てくれるかな?まるで告知していないから…知り合いは結構いるけど…仲良しかは…わからないからね…」
などと雑談を進めていると画面に通知が表示される。
「もしもし。お名前よろしいですか?」
「はい。スギザキで〜す。甘ちゃん!おめでとう!」
「スギザキさん。ありがとうございます!Vサーバー以来ですね」
「本当だよ。何で連絡くれないの?」
「して良いのか分からなくて…」
「えぇ〜してよ〜」
「今度しますね。スギザキさんからもしてくださいよ」
「良いの?しつこく送ると思うけど?」
「良いですよ。返事するの面倒じゃないので」
「やった!言質取ったからね?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと返事しますから。心配ないです」
「良かった。この後も凸待ちは続くんでしょ?」
「そうですね。来てくれるかはわからないですが」
「いやいや。二人も待機しているはずだから私はこの辺で。本当におめでとう」
「ありがとうございました」
そこで通話を切ると続けざまに通知が表示される。
「もしもし。お名前よろしいですか?」
「はい。ライ麦一番です。おめでとう〜」
「ありがとうございます。スギザキさんに続いてライ麦一番さんまで来て頂けました。嬉しい限りです」
「いいえ〜。いつでも通話して遊ぼうよ」
「良いんですか?」
「もちろんだよ。また四人でゲームしよ?」
「そうですね。パーティゲームでもFPSでも何でもやりましょう」
「うん。楽しみにしているね。じゃあ次はきっと宇宙ちゃんが控えていると思うから。またね」
「はい。ではまた」
そこで通話を切ると宣言通りというか世界宇宙からの通話が表示された。
「もしもし。お名前よろしいですか?」
「はい。世界宇宙です。甘ちゃん!おめでとう〜」
「ありがとうございます。二人にも言ったんですけど…」
「うん。配信観ているよ」
「じゃあ話は早いですね。また遊んでくれますか?」
「もちろんだよ。二人でも遊びたいな」
「良いんですか?」
「うん。甘ちゃんとイチャイチャ配信したい」
「いやいや。お互いのファンが発狂すると思いますよ」
「大丈夫だよ。ガチ恋勢なんていないから」
「いると思いますけどね…考えておきます」
「うん。じゃあ私は企画を練っておくね。とりあえず今日はこの辺で。また遊ぼうね」
「はい。よろしくお願いします」
通話を切るとそこからも様々な配信者と通話をして過ごすのであった。
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