第21話 ダボハゼたち
やる気のある連中がK課長と衝突して次々に辞めて行く中で、ダボハゼ連中は悠々と会社の中を泳いでいた。
まったく仕事ができないが故に、誰も相手にしない連中。あのK課長でさえ、彼らのことは放置していた。仕事に駄目出ししようにも、彼らは仕事自体をしていないのだから世話がない。下手につつけば課長の手腕とやらを疑われるので最初から彼らはいない者としている連中。
あちらにたむろして口をパクパクさせていたと思っていたら、今度はこちらで口をパクパクさせている。同じゴシップを一人一人に話すことで一日を潰しているのだ。
まさにダボハゼ。
自己中I先輩については七年間観察していたが、その間、何一つ仕事はしていない。倉庫作業の手伝い一つ、まともにできていない。
今度のプロジェクトのために他の会社から送り込まれたメンバーの内二人もI先輩と同じく何もしていない。ただそこに居るだけだ。こういう人物を送って来ること自体、その会社のやる気の無さを示している。それでも外に出張に出せば人件費を稼げるのだから立派なものだ。
最後が東大出のF氏だ。リーダーのK主任が、あいつと俺が同じ大学出というのが情けないと嘆くだけはある。
しかしそれでも流石に東大出、そつなく仕事をこなすようには見える。マニュアル担当になり、会議を開き、先輩諸氏から現在のマニュアルに対する意見を聞き、議事録を作り、すべての資料を棚にまとめて・・・それで終わり。
それで終わりなのだ。
結果を実際のマニュアルに反映することは無い。何もしない。
仕事というものの意識。それがどのような製品になるべきかの意識が完全に欠落している。
売らなければお金にならず、お金にならなければ食えない。目的意識がなければ、仕事はできない。それの悪い意味での実証がこの人であった。
学歴と仕事のできるできないには全く関係がないことの証明でもある。
彼はこの後、会社を辞めて、和歌山の医大の試験を一発で通過したと聞いた。とにかく試験だけは得意技なのだ。彼がどのような医者になるのかは想像だに恐ろしい。医者にかかるのがまた一つ怖くなる話である。
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