第14話 猛毒
一日椅子に座り続け、集中を絶やさず仕事をする。それにK課長の無意味でしつこい嫌味が加わり、ストレスは最高潮に達する。
太り始めた。自分でも明らかに異常とは思う。だが医者に行く時間的余裕は無いし、何よりも自分の体を大事に思う心の余裕というものが既に失われている。
それでも職業意識に従い、仕事の手は抜かない。
さらに肥満は進行する。身長が174センチなのに、体重が82キロに増えた。
正確に言うと太ったのではない。浮腫んだのだ。増えた分はすべて水分。
その結果、全身の穴という穴から出血した。
歯茎から出血した。鼻血が止まらなくなった。痔が始まった。
後は、目と耳から血を吹き出せば完璧だ。
このままでは死ぬ。そう実感した。
深夜に運動をすることにした。近くの公園に行き、柔軟体操を行う。こんなのでもやらないよりは増しだ。
日々のストレスも溜まっている。体を動かすのは気持ちが良い。
程なくして、公園に立派な看板が立った。
『この付近に痴漢が出没します。注意してください』
思わず声が出た。俺かい!
だいたい、痴漢が出そうな時間には、私が運動している。人気が無くて静かだから、ここが気に入っていたのに。じゃあ、私は暗がりに潜む痴漢の目前で延々と柔軟体操をしていたのか。
痴漢に間違われてもつまらないので、深夜の公園歩きを止める。
どのみちストレスの原因であるK課長の頭が治らない限りは、何も解決しないのである。
やれやれ。
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