第189話 VSウェルター級ガンホ2


 『皇選手の良いボディフックが入ったー!!  タタラを踏むガンホ選手! 更に皇選手が追撃を--おおっと! 一旦離れて距離を取りました!』


 肘を躱してボディ。そのままもう2.3発ボディに打ってやろうと思ったけど、ガンホ選手がクリンチをして来そうになったので、追撃をやめて離れる。


 ガンホ選手はクリンチの時に頭突きをしてきたり、肩で顎をカチ上げたりしてくるから、要注意なのだ。クリンチされそうなら離れる。これは鉄則である。


 ガンホ選手は平静を装ってるが、結構手応えはあった。恐らくそこそこ効いてると思われ。


 ここで更に畳み掛ける事も出来るが、一旦距離を取ってフリッカーをお見舞いする。


 ボディを食らって今は足が動き辛いだろう。ここで更に畳み掛けてダメージを与えるのも良いけど、動けない相手に遠距離から一方的に串刺しにするのも悪くない。


 近付いたら近付いたで、何かしらの反則をされそうだし。


 『皇選手! 序盤とは一転して、ジャブでガンホ選手の動きを止める!! 防戦一方のガンホ選手!! 今の所は皇選手にペースを握られてるぞ!! ここから一体どうなるのか!?』


 ジャブを打ちながら冷静に相手の様子を窺う。試合前は自分を制御出来てなかったけど、ギリギリで我に返れたのが良かったな。


 今はなんとかちゃんと自分を律する事が出来てると思う。頭が沸騰してたら、最初の肘も、その後のクリンチも対応出来てなかったかもしれない。


 ジャブを打ちながらジリジリと接近する。このままひたすら、ジャブを打って顔をパンパンに腫らせてやるのも一興だけど、それじゃ俺の気が収まらない。


 もう二度とボクシングがやりたくなくないってレベルでボコボコにしてやりたい。まあ、それを狙って変な隙が出来ないように注意しないといけないが。


 俺がいつ仕掛けてやろうかと思案していると、ガンホ選手はボディのダメージがマシになってきたのか、顔付近にガードをガチガチに固めて前進してきた。


 肉を切らせて骨を断つ戦法か。致命的なダメージだけは避けて、なんとか接近戦に持ち込もうって魂胆だろう。


 でもそれはもう今までの対戦相手で何回も見て来たんだよなぁ。


 俺の遠距離からのジャブを嫌って、無理矢理にでも前進してくる。もう何回も何回も同じ経験をしてきた。それでもこれぐらいしか出来る事がないんだろう。


 リーチ差ってほんとおっきいや。


 『ガンホ選手が行ったーっ! ジャブの嵐を掻い潜って、皇選手に接近!! 得意のインファイトに持ち込めるか!? しかし、皇選手はこれを冷静に躱す! そして躱し様にボディ!! これも綺麗に入ったぞ!! ガンホ選手はなんとか耐える!』


 今までは突っ込んで来た相手のパンチに合わせてカウンターを打つようにしてた。でも前回のホセ選手との戦いでそれを読まれてた節があって、バリエーションを増やしました。


 いや、バリエーションを増やしたと言うより、無理にカウンターを狙うのをやめた。普通にいなすという事を覚えたのだ。


 現にガンホ選手もカウンターを警戒してたっぽいし、俺がインファイトに付き合わず、冷静に距離を取ろうとしてるのを見てびっくりしていた。


 その隙をついてボディ。ダメージが回復して来たところに、思い出させるようなパンチ。これって、意外とキツいんだよね。


 まだまだ俺の鬱憤はこんなもんじゃないぞ。今日の試合はとことん付き合ってもらう。

 

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