第187話 入場
いつも通り俺の入場曲である『災害』が流れる。アウェイって事で俺が先に入場してる訳だけど…。
「おお。こりゃ凄い」
「強烈だな。アウェイとは言え、ここまでのは中々ないぞ」
俺が入場すると同時に物凄いブーイングが。多分罵声も言ってるんだろう。韓国語でわーきゃー聞こえてくる。
俺はそのブーイングに何故か感激していた。サッカーとか他のスポーツでもえげつないブーイングを動画サイトとかでも見た事があるけど、まさか自分がそれを体験する側になれるとは。
これ、観客達は少しでも俺の心を乱せたらと思ってやってるんだろう。でも、逆効果である。なんかテンション上がって来ちゃった。
まあ、野次や罵詈雑言なんて可愛いもんだろう。俺には言葉は理解出来ないしね。別のスポーツではスタジアムに豚の頭とか投げ入れられたりしてるらしいぞ。
流石にそこまではない。それをされたら俺もビビると思う。気持ち悪いし。
「あ、俺の応援みっけ」
アウェイ一色の会場だけど、リングに上がって四方を見渡しながら一応ペコリと頭を下げてると、日の丸応援団が。韓国のブーイングに負けじと応援してくれている。
「あそこ、大丈夫かな。俺はこれからガンホ選手をボコボコにする訳だけど。試合が終わった後に変な八つ当たりとかされないかな」
「神宮寺グループの中でも腕利きの警備員が大量に派遣されてるらしいから大丈夫だ」
「流石伯父さん。抜け目ない」
俺は笑顔で手を振って日本の応援団に応えておく。異国の地までわざわざ応援に来てくれたんだ。ガンホ選手を血祭りに上げる事が何よりの恩返しになるだろう。
俺の一通りの紹介が終わると、次はガンホ選手。
ド派手な音楽と共に賑やかに入場してくる。
「なんだろう。別に僻みとかじゃないけど、顔面が潰れるくらい殴ってやりたくなるな。別に僻みじゃないけど」
なんか美人なお姉さんを何人も引き連れて、やいのやいのと入場してくるんだ。毎回こんな感じで入場してるから、知ってた事ではあるけど、実際生で見てみると、何故か殴りたいゲージがむくむくと上昇する。
くそったれめ。こう言ってはなんだけど、ガンホ選手って意外とイケメンなんだよ。なんか若い世代の人達から人気なカッコいいワルって感じの見た目で。
結婚相手にはしたくないけど、遊びで付き合うなら花丸満点って感じ。
ド派手な音楽、ド派手な取り巻き、ド派手なパフォーマンス。ホームでの開催をこれでもかってぐらい活かした演出でリングに上がってくるガンホ選手。
あれだ。有名なボクシング漫画の奴に似てるな。トリッキーな動きをしまくる派手な奴。あくまで雰囲気だけでプレースタイルは別モノだけど。
ガンホ選手は俺の方を見て、手を前に出して首を掻っ切るポーズをして挑発してくる。なんかサマになってるのが腹立つんだよなぁ。
俺はとりあえず笑顔で手を振っておいた。なんか良い感じのポーズが思い浮かばなかったのだ。こんな事なら何か考えておけば良かった。
が、この俺の笑顔はやはり相手を苛立たせるらしい。明らかに不機嫌になってるガンホ選手。
人を煽る人って煽り返されたら、途端に癇癪を起こすよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます