第186話 試合前
「マジかよ。良く来てくれたな」
試合当日の朝。
リカバリーも順調に進んで、減量苦からも抜け出して気持ち良く目覚められた。
で、朝ご飯を食べてスマホをぽちぽちしてると、チンピラ龍騎から連絡がきていた。
『応援に来たぞー』ってメッセージと共に、高校時代の友達何人かと一緒に韓国の空港での写真が送られてきた。
ちょっとウルっときちゃったね。まさか海外にまで応援に来てくれるとは思ってなかった。いくら韓国が近いとはいえ、それでも海外に来るってのは色々面倒も多い。
それでも来てくれた龍騎達には感謝感激なんちゃららである。
そう思ってたんだけど…。
続けて送られてきた写真付きメッセージ。
そこには彼女と韓国観光を楽しんでる写真、他の友達もみんな彼女を連れて観光を楽しんでらっしゃる。
ふむふむほうほう。
「爆発しろっと」
スマホをぽちぽちして一文だけ送る。
よーく見たら応援に来てくれた友達みんなが彼女持ちのリア充集団だった。
俺の応援ついでに彼女と韓国旅行に来たってところか。それとも俺の応援がついでで、彼女との旅行がメインだったり…。
いやいや、せっかく応援に来てくれたのにのんな事思っちゃいかんな、うん。今回は完全アウェイだし、応援に来てくれるだけありがたいって思わなくちゃ。
でもなんでだろう。
今すぐガンホ選手をボコボコにしたい気持ちでいっぱいです。ずっとボコボコにしたいと思ってたけど、今はその気持ちが更に強くなってる。
ほんと、なんでだろうね。
「いたっ! 痛い! 拳聖、ちょっと飛ばし過ぎじゃないか? そんなんじゃ、試合前にバテるぞ」
「え? そう? いつも通りだけど?」
「入れ込み過ぎなんじゃないか? 少しは落ち着け」
そこからしばらく。
試合会場に入って、控え室でウォーミングアップ。父さんが持ってるミットをいつも通りペシペシ打ってると、苦情が飛んできた。
俺はいつも通りやってるつもりだったんだけど、どうやら思った以上に飛ばし過ぎてるらしい。
これはいかんな。自分を制御出来てない。
今までの試合の中で一番気合いが入ってるからか、いつも通りの動きが出来てないっぽい。
「自覚がないのは不味いな。今回の試合、もしかしたら自分が思ってる以上にバテるのが早いと思っておいた方がいいぞ」
「確かに」
俺はミット打ちをやめて深呼吸しながら柔軟する。試合時間が近付いてくるにつれて、気持ちが高揚してくる。
それをなんとか抑えようとしてるんだけど、どうにも制御が効かない。
「………これはプランを変えた方が良いかもしれんな。いつも通り様子見から入る予定だったが、1R目はもう思う存分飛ばしていけ。それである程度疲れたら、身体も思考も冷静になるだろう」
「別に倒してしまっても構わんのだろう?」
「フラグだろ。父さんでも知ってるぞ。全く…。落ち着いてるのか、入れ込んでるのか分からんな」
馬鹿な事を言い合いつつも時間は進む。
「皇選手、入場準備をお願いします」
「よーし、行くか」
「ブーイングに気圧されるなよ」
「何言ってるか分からないブーイングに、どう気圧されろってんだ」
「その辺は図太いんだよなぁ」
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