第181話 シンプルイズベスト
「基本はアウトレンジで戦う方が良いか。逃げてるみたいでなんか嫌だけど」
「考え方を変えろ。アウトレンジで嬲り殺しにしてると思えば良い」
俺はまだフラフラした頭で今日の練習映像を見る。反則対策を始めて三日ほど。ようやく慣れてきたところで、スパーリング相手が父さんに変わった。
三銃士にずっと反則ばかりやらせるのは良くないそうだ。
で、父さんがガンホ選手の必殺技とやらを繰り出してきて、俺は見事にダウンした。
お陰で頭はフラフラである。
ガンホ選手の必殺技。
ちょっと説明しにくいけど、まずはフックを繰り出す。そのフックが当たれば良し。当たらなかったら、フックした腕を首に絡めて固定。動けないようにして逆の手でストレートやらフックやらをクリーンヒットさせてくる。
まあ、普通に反則である。
俺は父さんにやるぞーって言われて分かってたはずなのに、初見じゃ対応出来なかった。父さんの手際が良すぎたってのもあるけど。
「後はあれだな。もう1Rから猛ラッシュして、反則なんてさせる隙を与えずにぶっ飛ばす。拳聖は大抵早いラウンドでKOしてるけど、様子見から入る事が多いだろ? 1Rからいきなり飛ばしたら、相手も面を食らうんじゃないかな」
「なるほど」
確かにそれはありだな。でも、出来れば再起不能になるぐらい、二度とボクシングがしたいって思わなくなるぐらいボコボコにしてやりたいんだけどな。
あんな反則ばっかりするやつが世界チャンピオンだなんて、ボクシングとしての在り方を疑われちゃうよ。たたでさえ格闘技は野蛮なスポーツなんだ。せめてルールを守るぐらいはしないとさ。
「まあ、お前が考えてる事は分かるがな。まずは何より勝つ事だ。なんだかんだこの世界は結果が全てだ。どれだけ傍若無人だろうが、性格がクソだろうが、善人だろうが、聖人だろうが、勝者が偉いんだ。自分の主義主張を通したかったら、まずは結果を出す事だな。まっ、お前は今まで結果を出し続けてきてるが」
父さんはそう言って俺の頭をポンポンと叩き、ジムの一室から出て行った。
まあ、父さんの言う通りだな。ガンホが反則しまくりでも韓国で人気があるのは、あの国の人柄というのもあるけど、結果を出してるからだ。
あれで負けまくってたら、批判されまくってるだろう。
「なんにせよ、とりあえず勝つ必要がある訳だ。いつも通りだな」
難しく考え過ぎてたけど、結局はいつも通りなのかもしれん。ちょっと相手が変な手を使ってくるってだけで、俺のやる事は変わらないか。
反則すらも真っ向からねじ伏せてやれば良い。ぐうの音も出ない程にボコボコのボコにしてやる。
なんかちょっと吹っ切れたかも。俺は馬鹿なんだから、あれこれ考えすぎるのも良くないよね。目の前の敵をただブン殴る。
シンプルイズベスト。
やっぱこれが1番よ。
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