第164話 合宿終了後の練習
「ちょろい。ちょろすぎる」
「分かる」
「あの練習を味わった後だとな」
平地に戻って三日間は完全休養。俺も家に帰ってから、軽いランニングと柔軟しかしてなかった。
で、休養が明けて初の練習。
ジムで軽く身体を慣らしつつ、練習していくけど、あまりにもちょろく感じてしまう。
正直、まだ高地トレーニングの効果は実感してない。だから、どの辺が強化されたってのは具体的に分からないんだけど、普段通りの練習がちょろく感じれるのは、一つの成長ではなかろうか。
怪我しないように気を付ける必要はあるが、更に練習の強度を上げれる。そうすりゃ、必然的に実力も伸びていく。
「そんなにですか? 僕も学校が無かったら参加したかったなぁ」
「そんな軽い気持ちで行くと後悔するぞ、小僧」
「うむ。今までのどの練習よりもきつかった。拳聖にスパーリングで転がされるなんて、屁でもないレベルだ」
学生って事で参加出来なかった孤南君が、参加したかったと言うと、黒木さんと赤城さんが先輩風を吹かす。まあ、その気持ちも分からんでもない。
序盤と最終日は途中でくたばったとは言え、結構俺の練習について来てたみたいだから。本当に一皮剥けた感じはするよね。
なんでも、会長が今回の合宿をみて、次の日本タイトル防衛戦の内容と結果次第では、OPBF挑戦も視野に入れてるとかなんとか。
二人もそれは聞いていて、結構気合いが入ってるみたいだ。OPBFまでいくと、ファイトマネーも相当なモノになる。本人達にとっては一世一代の大勝負だろう。
まあ、問題は赤城さんだけど。
フェザー級の赤城さんは、もしOPBFを獲って世界に挑戦するとなると、立ち塞がるのは同じ日本人である車谷さんだ。
あの人は階級をフェザー級に上げて、俺と同じく3階級制覇を達成したからね。年齢も31歳。脂の乗り切った最強のライバルだ。
車谷さんと別団体に挑むって手もあるけど、世間は絶対に日本人対決を望む。正直俺が一般人の観客の立場なら見てみたいって思う。
日本人同士の世界戦なんて盛り上がらない訳ないんだから。
正直赤城さんは、まだ車谷さんレベルには達してないと思う。まだまだ伸び代はあるけどね。まあ、ここは本人の頑張り次第か。
まっ、先の事を考え過ぎるのも良くないね。今は目の前の試合だ。
俺はメキシコのホセ選手とタイトル戦
黒木さん、赤城さんは日本タイトル防衛戦。
しっかりと勝ち切って、次の事を考えよう。
「あの、拳聖さん! いつか都合の良い日はありますか? 進路の事でご報告しておきたい事がありまして」
「俺は練習以外では常に暇してるぞ」
「拳士さんの方は…」
「あー、それは分からんな。後で聞いておくよ」
「お願いします」
俺達が合宿に行ってる間に、母さんは海外での映画撮影から帰って来ていた。母さんが結構長く家を空けてた事もあって、父さんは甘々状態だ。お嫁サービスをスケジュールにびっしり入れてる可能性がある。
因みに両親と俺が家を空けている間、妹の聖歌は爺ちゃんの家に預けられて、これまたデロンデロンに甘やかされていたらしい。
欲しいもんはなんでも買っちゃうぞ状態だったとか。まあ、その辺聖歌は母さんにしっかり躾けられてるから、過度なお願いはしなかったみたいだが。
せいぜい美味しいご飯を食べに行ったぐらいだとか。爺ちゃんは俺達二人の孫が全然甘えて来ないからしょんぼりしてるらしい。
俺は小さい頃から結構甘えてるつもりなんだけどな。
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