第155話 検査結果
「本当に僅かですが、確かに筋量が偏ってますね」
「マジですか」
美咲さんとの初デート? いや、あれはデート、あれはデート。間違いなくデート。
龍騎が帰って来て、三人でご飯を食べてお開きになったその翌日。
俺は美咲さんに言われた事が気になって、色々調べてもらおうと思って大学病院にやって来た。
左利きの人特有の筋肉の偏り方なんて今まで言われた事がなかったし、このまま鍛えると悪影響が出るかもしれないってなると、ちゃんと検査しておかない訳にはいかない。
「でもこれを目視だけで判断出来る人がいるとは驚きですね。本当に微妙にって感じですから」
「はわー。美咲さんが怖くなってきた」
「美咲さん? 舞浜美咲さんですか?」
「え? はい。そうですけど」
見てくれたお医者さんがびっくりした顔をしてる。なになに? 美咲さんって有名なの?
「医学界隈ではかなり有名ですよ。あの若さで論文をいくつも発表して、スポーツ医学の発展に大きく貢献されてる方です。特に筋肉関係の発想は素晴らしい。私もいくつか論文を読ませて頂きました。お知り合いなのですか?」
「友達の姉です。昨日お会いする機会がありまして。それで筋肉がちょっと偏ってるよって言われたんで、ちゃんと調べてもらおうと思って今日は来たんです」
美咲さんがとんでも人物だった件について。まあ、論文を発表してるだの言われてもどれだけ凄いのかは分からんが。まあ、目の前のお医者さんが凄い凄い言ってるから、本当に凄いんだろう。知らんけど。
ただの筋肉フェチ変態女じゃなかったって訳だ。
「で、どうしたら良いですかね?」
「うーん。普段の生活から気を付けていれば、大丈夫なレベルだとは思うんだけど…。右利きなんだよね?」
「右の方が使う機会が多いって意味では右利きです」
「まあ、トレーニングのメニューを少し変えれば問題なく矯正は出来ると思うよ。そこはトレーナーさんのしっかり話し合って。それそこ、舞浜さんに聞いてみるのも良いかもしれないね」
「って事があったんだよ」
「龍騎君のお姉さんは凄いんだな」
家に帰って来て検査結果を父さんに報告する。父さんがパソコンで美咲さんを検索すると、色々ヒットしたらしい。
ハーバード大学の学士号と修士号を21歳で取得。その後論文を多数の論文を発表。
「学士号と修士号って何? なんか凄そう」
「なんだろうな。俺も分からん」
俺と父さんは馬鹿なので、難しい言葉を並べ立てられても分からん。論文も英語で何書いてるか分からん。
「母さんがいないとダメだね、俺達は」
「全くだ」
母さんは今、映画の撮影で海外に行っている。現在、我が家には馬鹿しかいないのだ。聖歌は天使だからノーカン。でも成績は優秀らしい。
そう考えると、神宮寺家はよく父さんとの結婚をオッケーしたよな。いくら世界チャンピオンのボクサーだとは言え、良い所のお嬢さんが、学のない父さんと結婚してるんだから。そういうお嬢さんってお見合いとかが普通ってイメージだし。
何か波瀾万丈な物語でもあったのかね。爺ちゃんの母さんを可愛がってる様子から、結婚なんてそう簡単に許してもらえそうな雰囲気じゃないんだけどなぁ。
爺ちゃんは父さんと会っても仲良さそうにしてるし、俺と聖歌にもデロンデロンのゲロ甘だ。案外すんなり決まったのかね? 聞きたいけど、父さんは前にはぐらかしてきたんだよね。
今度爺ちゃんが来たら聞いてみようかな。
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