第153話 フェチ


 「それでね。参考までに、拳聖君がやってるトレーニングを教えてもらいたいんだ」


 「はぁ。別に良いですけど。特別な事は何もやってませんよ?」


 興奮冷めやまぬ美咲さんは、その後もあれこれと説明してきたけどね…。龍騎から聞いてないかな? 驚くかもしれませんが、この皇拳聖、凄く馬鹿なんですよ。


 あなたの弟の助けがなかったら、卒業出来てたかも怪しいぐらい馬鹿なんですよ。まあ、こういう研究者気質の人は、お喋りが大好きって相場は決まってるんだ。


 相手が聞いてるか、聞いてないかは関係ない。喋る事に意味があるというか。理解してなくても、聞いてる風にうんうん頷いておけばそれで満足してくれるのである。


 まあ、そんなこんなで俺が反射神経の維持、向上の為にやってるトレーニングを美咲さんに教える。


 と言っても、マジで特別なトレーニングはしてない。スマホで調べたら出てくるような事をしてるだけだ。正直、ちゃんとトレーニングさえしてれば、結果が出るチートなボディを神様に貰ったようなもんだからね。


 「ふむふむ。それだけかい?」


 「ええ。これぐらいですね。でも、物心がついた時からやってるので、それが大きいかもしれません」


 「そうだね。幼少期の過ごし方で、その後の運動神経に影響が出るから。やっぱり幼少期の教育が大事なんだねぇ」


 美咲さんはパソコンを引っ張り出してきて、ぽちぽちとタイピングしながら、俺に色々な事を聞いてくる。


 ………なんでこうなったのかな。俺は今頃キャッキャウフフしてると思ってたのに。医者と患者みたいな関係になってませんかね…。ちょっと違うか。まあ、似た様なもんでしょ。


 「まあ、目の事は今後も要観察だね。これからも時間がある時に付き合ってもらって良いかい?」


 「へ? え、ええ。良いですけど」


 目の事はって言い方に疑問を覚えつつ、とりあえず了承しておく。興味がない訳じゃないしね。専門の人がこの神様特別ボディをどう見るのかは少し気になる。


 「じゃあ次は拳聖君、脱いでもらえるかな?」


 「なんですと?」


 「脱いで欲しいんだ」


 いや、そんな真剣な眼で言われましても…。言葉が足りてないんじゃないかと思うんですが。


 俺だってそこまで鈍感じゃない。これまでの話の流れでえっちぃ雰囲気の脱いでじゃないって事ぐらい分かってるさ。目の次は俺の身体の筋肉にでも興味を持ったんだろう。


 でも急に俺好みの美人に脱げって言われるとね…。分かってても身構えちゃうもんなんですよ。悲しいかな、これが男という生物の本質なのである。


 まあ、脱ぐんだけど。ここまで来たらどうにでもなれって感じだ。


 「はぁ…。うっとりするぐらい綺麗な筋肉だ…」


 「ん?」


 「日本人でこれだけの高身長で筋肉を携えている人はそうは居ないよ。しかも私好みの筋肉…。惚れ惚れしちゃうね」


 てっきり、さっきの目の時と同じ様に研究者視点で見られるのかと思いきや。美咲の視線がちょっとおかしい。滅茶苦茶うっとりしてらっしゃる。美人のうっとり顔。控えめに言って最高です。


 もしかして美咲さんは筋肉フェチってやつなんじゃなかろうか。

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