第151話 訪問


 ピンポーン。


 俺はドキドキで龍騎の家のインターホンを鳴らす。我が家から近い事もあって、徒歩での訪問だ。


 龍騎姉から連絡があってから数日。一張羅に身を包み、手土産を持っていざ出陣。まさか、いきなり家に呼ばれるとは思ってなかったけどね。


 「いらっしゃい」


 「お邪魔します」


 出迎えてくれたお姉さんは、やはりコンビニで会った人だった。言われてみれば龍騎に似てるな。


 特に目。正直目つきが怖い。龍騎も見た目がチンピラみたいだったけど、お姉さんもそれっぽい服を着たら女番長にでもなれそうだ。


 まあ、タイプなんですけどね。皇拳聖、何を隠そう、ちょっと強気な感じのお姉様がモロタイプなのである。


 俺のタイプの話はさておいて。


 「連絡が遅くなって悪かったね。ちょっと色々あって」


 「いえいえ。連絡を頂けただけでも嬉しいです、はい」


 うむ。滅茶苦茶緊張するな。構築してきた会話デッキなんて、とうの昔に飛んでしまってる。女性経験の少なさがモロに出てしまってます。正直試合の時より緊張してるぞ。


 「弟から拳聖君の事は聞いてるよ。私はつい最近まで海外にいたから、帰ってきて弟の同級生が世界チャンピオンになったって聞いて驚いたよ」


 「き、恐縮です」


 すまん。誰か助けてくれ。美人な人と話すのは母さんで慣れてると思って余裕をぶっこいてた自分をぶん殴ってやりたい。


 今思えば、母さんと妹以外で女の人と二人で話すのは初めてかもしれん。今までは学校で、周りに人がいる状況だから、その場に応じて空気を読んでたけども。


 タイマンで話すのってこんなに緊張するんだ…。良い勉強になりましたよ…。


 「それでね。今日は拳聖君と仲良くなりたいと思ったのもあるけど、ちょっと聞きたい事があって、来てもらったんだ」


 「聞きたい事ですか?」


 ふむん。なんじゃろな? 仲良くなりたいって思って頂けるだけで、俺は幸せなんだが、どうにもその聞きたい事が本命に思える。


 「これなんだけどね」


 「これは…」


 龍騎姉…美咲さんはそう言って、タブレットを操作して動画を見せてくる。


 「俺の試合ですか? へぇー。こんな綺麗にまとめてくれる人もいるんですね」


 俺の試合映像のダイジェストみたいな感じだった。なんかちょっとまとめ方に違和感があるけど、丁寧にまとめてくれている。


 「あ、これは私が全部やったんだ。これをしてたから、ちょっと拳聖君に連絡するのが遅れてね」


 「そうなんですか」


 美咲さんがまとめてくれてたらしい。なんでだろう? 配信者でも目指してるのかな?


 「ちょっとまとめ方が変だろう?」


 「まあ…。普通はKOシーンとかそういうのをまとめますよね」


 美咲さんが編集してくれた動画は、なんか俺がパンチを避けてる場面ばっかり。中には夜木屋選手に思いっ切りパンチを打ち抜かれてるシーンもある。


 まあ、首を捻って回避出来たんだが。この時は焦ったなぁ。ボクシングの試合で一番焦った瞬間かもしれん。


 「単刀直入に言うけど、拳聖君って目がおかしいよね」


 「はい?」


 一体どういう事だってばよ。

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