第150話 予想外
「そんなやられっぷりまで真似しなくても良いのに」
スパーリングが一通り終わった。黒木、赤城、服部の新生スパーリング三銃士がリングの上で転がっている。
「孤南君にはこういうキャラになって欲しくなかったんだが」
「ぼ、僕は至って真剣にやってるつもりですよ…」
息も絶え絶えな孤南君が何とか声を振り絞って反論してくる。まあ、まだ中学三年生。そして一応俺は世界チャンピオン。一方的な展開になるのは仕方ない。
でも、果たしてこれは孤南君のためになってるのか。俺は意外とあっと思うような事もあって、三銃士との練習は良い刺激になってるんだが。
一応会長からはスパーリング解禁許可はもらってるんだが。
「世界チャンピオンの力を肌で実感出来るだけでプラスですよ」
「ふむ。確かに」
「拳聖君で慣れておけば、高校に入ってもなんとも思わないでしょうね」
「まあ、自分で言うのもなんだけど、高校生で俺ぐらいの圧を放つ奴なんて、滅多にいないだろうな。100年に1人の逸材とかがいたらまた別だろうけど」
そんな奴がいる訳ないって言えないのが、スポーツの世界なのである。偶にバグのような選手がポンと出てくる。
それが今は俺なのかもしれないが、俺はズルありきだから。勿論練習しないとなんの役にも立たない特典ではあるが、それでもこれがあるのは非常に大きい。
そんなんじゃなくて、ナチュラルな天才がこの世の中にはいるのである。『ルトゥール』の二人とかね。あの二人は間違いなく人類のバグである。
「じゃあ最後の締めをやりますかー」
そんな話はさておいて。今日の練習も後1時間もしないうちに終わる時間である。スパーリングのいつもの締めをやらねばなるまい。
俺が声を掛けるとリングに転がってた黒木さんや赤城さんが復活した。
「これこれ。これをやる為にスパーリングを頑張ってると言っても過言じゃねぇ」
「ボーナスタイムじゃー!!!」
「うるさ」
急に元気になっちゃって。そりゃ、今まで好きにやられた相手に腹パンし放題なんて権利があったら、元気になるのは分かるけどね。
俺の『超回復』にモノを言わせた腹パン練習。これはやり始めてからずっと続けてる。お陰で腹筋はカチカチである。それでも良いのをもらったらえずくんだから、やはり『超回復』では、内臓までは鍛えられないって事だろうか? 前よりはタフになってるから効果は出てると思いたいけど。
後はイスでぐるぐる回されて、平衡感覚を滅茶苦茶にした後のスパーリング。これも相変わらず続けている。良いパンチをもらった時の対処法として効果的だと思ってる。
最近は三半規管が鍛えられすぎて、滅茶苦茶ぶん回してもらわないとフラフラにならないけど。この練習はまあ、きつい。最近では吐く事はなくなったが、最初は練習が終わるたびにゲロゲロしてた。
で、新生スパーリング三銃士に好き放題やられて、次のスパーリングの時に覚えておけよと捨て台詞を吐いてから、シャワーを浴びて家に帰る。
「むっ?」
ジムを出る前にスマホを確認すると、すっかり忘れてた人物から連絡が。
「……全く予想してなかった所からパンチをもらったような感覚だぜ。え…マジでどうしよう…」
すっかり放置プレイされてた龍騎の姉からのお誘いだった。急展開すぎてどうしたら良いか分からないってばよ。
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