第143話 試合後
失神していたガルバチョフ選手は、最初は試合が終わった事を認識していなかった。慌てて起き上がってファイティングポーズを取ろうとしてたけど、スタッフやドクターに止められてようやく現状を理解したらしい。完全に意識を刈り取るとこういうのもあるよなぁ。
で、一応安否確認とありがとうございましたを言って、リング上でセレモニーをして控え室に戻った。
「あれだけみっちり準備したけど一瞬で終わったなー」
「試合ってのはそういうもんだ」
「向こうは完全に減量失敗しとったやろ。それもあったんやろな」
控え室でバンテージを取りながら父さんや会長と話をする。前日にリミットオーバーしてて、慌てて落としたけどもその後のリカバリーも万全ではなかったっぽいし。
まあ、減量やリカバリーもしっかりとこなしてこそのプロだしね。ガルバチョフ選手も異国の地に来て色々不便もあっかもしれないけど、諸々込みしても勝ちは揺るがなかっただろう。
俺も今は日本でしか試合をしてないけど、いずれ海外で試合をする事もあるだろう。アウェイの空気感を味わう事にもなるし、他にも色々不便があるかもしれない。
父さんも海外で試合する時はちょっと嫌そうだったしね。
「一応この後ドクターチェックを受けてもらうけど…」
「パンチ、一発ももらってないけど」
「だから一応なんだ」
まあ、これは仕方ない。甘んじて受け入れよう。
「早く終わりすぎたな。今日はもう帰るだけなんだが」
「テレビ局の人も慌ててるかも」
祝勝会やらは後日にやる予定。俺も狙ってたとはいえ1RKOをかませるとは思ってなかったからなぁ。疲れ切って家に帰ってゆっくりする予定だったんだ。明日は朝から予定があるしね。
「おっ。早速おめでとー連絡がいっぱい来てる」
帰り支度をしながらスマホをぽちぽちしてると、試合を観に来てくれてた友達や、残念ながら都合が合わず試合には来れなかったけど、テレビでは観たって友達からいっぱい連絡がきていた。
試合終わるの早すぎとか、俺のジャブの連打に驚いてるような文言もちらほら。ジャブの件に関しては俺も驚いてます。
「ん?」
その中に俺の一番の親友とも言っていい、見た目がチンピラの龍騎から連絡が来ていた。
どうやらいつぞやコンビニで会ったお姉さんと試合を観に来てくれてたらしく、なんと、なんと俺に興味があるとか。なんとなんとである。
俺にもとうとう春がやって来たかと、鼻を伸ばしまくってると、連絡先を教えても大丈夫かと聞かれたので勿論オッケーする。
これがそこまで仲良くない知り合いから言われてたら、丁重にお断りしていたところだけど、俺は龍騎の事は信頼しているので。なんたって、あいつが居なかったら卒業出来てたか怪しいからね。
それから、今か今かと連絡が来るのを待ってたけど、結局家に帰っても、就寝前になっても龍騎姉から連絡が来る事はなかった。
あれれれ? 早速弄ばれちゃった感じですか?
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