第138話 まさかの
「皇選手、オッケーです」
なんだかんだと月日が過ぎて、いつの間にか前日計量の日に。今回の減量はかなり余裕があったから、苦労する事なくクリア。
体重計の上で上半身裸のマッスルポーズを見せて喜びを表す。
「ガルバチョフ選手、リミットオーバーです」
「ん?」
俺が服を着ながらガルバチョフ選手の計量を見てると、耳を疑うような声が聞こえた。リミットオーバー? マジで言ってる?
確かに計量会場に入ってきた時から、かなり顔色が悪いなとは思ってたけど、減量末期の選手ってのは、大なり小なりそういう顔をしてるから、あまり気にしてなかった。
集まってた記者達もどよめいている。
係の人やお偉いさん、俺やガルバチョフ選手を交えて話をする。オーバーしたのは100gらしい。
それなら、2時間あれば落とせるでしょ。再計量で良いんじゃない。これが1kgとかならまた考えものだったけど。パンツを脱いですっぽんぽんで計量してもオーバーしたらしいし、少し時間が必要だろう。
ガルバチョフ選手は結構いっぱいいっぱいっぽいけどね。それでも気合いで100g落としてきて下さい。
「向こうは減量失敗したっぽいなぁ」
「だな。かなり辛そうに見える」
俺より身長が低いのに、いっぱいいっぱいとはこれ如何に。その分筋肉がすんごいんだろうか。今のガルバチョフ選手は萎びたようにしか見えないけど。
俺はOS-1を飲みながら父さんと話をする。この後記者会見の予定だったんだけど、少し延期になりそうだな。
「お前は大丈夫なのか?」
「見ての通りだよ。絶好調だね」
ウェルター級最高。マジで今回の減量は苦労しなかった。水分は昨日も摂取出来たし、ご飯もちょろっと食べれた。今までの減量苦はなんだったのかってぐらい楽勝だった。
まあ、次はどうなるか分からないけど。今回より筋肉が付いてるだろうし。俺も次はガルバチョフ選手みたいに、死にそうになってるかもしれん。
そして2時間後。
ガルバチョフ選手はリミットいっぱいで計量をクリアした。2時間前よりさらに萎びた感じになってるけど、この後の記者会見とか大丈夫だろうか? リカバリーもあるだろうし。
俺はこの2時間で色々補給したお陰で、元気もりもりである。減量明けに食べてる時間が、世界で一番至福な時間かもしれんな。
俺がそろそろ記者会見場に移動しようとすると、ガルバチョフ選手が一応謝ってきた。ロシア語で言われても、何がなんだかさっぱりだから通訳を介してだけど。
映像で見たガルバチョフ選手は生粋のパワーファイターって感じで、もっと覇気がある選手だったのにな。
今はほんと言い方が悪いけど、萎びたもやしである。リカバリーはしっかりとしてくれる事を祈っておこう。
萎びたもやしをボコボコにしても面白くない。どうせ試合するなら強い相手とやりたいし、俺の今後のボクシング人生の糧になるような試合をしたい。
油断は一切してないけど、今のところ負ける気は全然しないね。前回の試合から反省して、パワーアップした皇拳聖をお見せしよう。
今回も龍騎や高校のクラスメイトが見にきてくれる。無様な姿は見せられん。高校に通ってる時の方が強かったとか言われたら、ボクシング一本に絞ってやってる意味がないしね。
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