第137話 漫画の技
「体重は?」
「70kgぐらい。まあ、順調かな」
ジムでスパンスパンと父さんが持ってるミットをパンチで打ち抜きながら、減量状況を報告する。
試合まで後一ヶ月ぐらいあるけど、後4kgぐらい落とせば良いだけなんだぜ。ウェルター級に上げてから、随分減量が楽になった。
まあ、それも今だけなんだけど。もう少ししたら筋肉もがっつり付いていくからな。セーブしてた練習量も、階級を上げてから増やしたし、またキツくなってくるだろう。
キツくなってきた辺りで階級を上げれたら理想だけど、そこら辺はどうなるかなぁ。俺がウェルター級で戦いたいのは一人だけ。
そいつとさえ戦えれば、階級を上げても良いんだけど、ギリギリまで逃げ回りそうな気がするな。
「ん。中々良くなってきたな」
「拳聖君はやれば出来る子なので」
精力的に取り組んできた、パンチスピードの上昇。パンチ力を落とさずにスピードを上げるっていう、欲張りセットをものにしようと、足腰を重点的に鍛えてきたけど、ようやく最近モノになってきた。
上半身と下半身のズレがなくなってきたんだよな。筋肉が付いてきた事もあるけど、一番はやっぱり『コーディネーション』の特典のお陰だろう。
体を自分の思い通りに動かすのは、思ったより難しい。この特典があるお陰で習得は早かった。ほんと特典様々だよね。
「最近は軽いジャブを受けてても、手にズシンと衝撃が伝わるようになってきた。対戦相手が気の毒に思えてくるぞ」
「それは嬉しい言葉だなぁ」
フリッカージャブも、もう随分長い事練習してきてるから。漫画のキャラに憧れて、カッコいいからと、俗物的な理由で始めたフリッカージャブだけど、予想以上に俺にマッチした。
リーチも長かったし、丁度良かったってのもある。やはり漫画は偉大である。
「でもこれはまだまだだな」
「これねぇ。決まったら強いんだけど、思ったより体に負担がかかる」
左アッパーと右の打ち下ろしをほぼ同時に打つパンチ。白い牙である。一瞬ガードが疎かになる難点があるものの、俺は元からガードをしないので弱点にはならない。
なら、取り入れてみようじゃないかと、試してみたは良いものの、中々体に負担がかかる。上半身を高速で捻るからね。まだ俺が扱うには、少し筋力不足感は否めない。
まあ、連発しないなら大した事はないけど。決まればフィニッシュブローになるんじゃないかって思ってるんだけどね。
「漫画の真似をするって言った時は、何を考えてるんだと思ったけど、馬鹿には出来んな」
「ほんと決まればだけどね」
まだまだ漫画みたいなキレはない。相手が相当油断してないと当てるのは難しいだろう。
「まあ、基礎を疎かにしないなら、怪我しないなら俺は何も言わん。モノに出来たら武器になるのは間違いないしな。だが、分かってると思うが…」
「これに固執するなでしょ」
「そうだ」
覚えたての技ってのは、どうしても使いたくなるからね。フリッカーなんて習得した時は、一時期ずっとそればっかりだったし。
でも試合中に覚えたてのパンチをなんとか当てようとムキになるとそこを狙われる。しっかり注意しておかないとな。
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