第136話 孤南君の進路
「そうか。孤南君はアマチュアの道に進むか」
「はい!」
孤南君がこのジムに入会して2年程。
地味な訓練をコツコツと積み重ねていき、入った当初と比べてかなり身体付きががっちりとしてきた。まあ、元から水泳をやってた事もあって、結構引き締まった身体をしてたけどね。
そして孤南君は今年で中学三年生。高校の進路を決めたりと忙しい時期に差し掛かるところだが。高校ボクシングの世界に殴り込む事にしたらしい。
「まあ、高校に通いながらプロってのは、中々苦痛だからな。減量とか。ライト級の時は特にきつかった」
「でもそれってボクシング部に入ったら一緒ですよね?」
「まあ、そうだろうな」
俺は高校ボクシングの事はあんまり知らないから、詳しくは分からないけど。インターハイとか国体とか色々あるんだろ?
中にはオリンピックとかもあるらしいじゃないか。孤南君がそこに出れるかは分からないけど、もし出れるなら応援とか行きたいねぇ。
「それで…。高校のボクシング部に入ったら、ここにはあまり通えなくなるんですよ」
「あ、そうなの?」
「はい。向こうで練習があるので。特に平日は厳しくなると思います」
なるほどー。確かに部活をやってたら、ここにいつもみたいに通うのも難しいよね。
「高校の部活ってなんか厳しそうだなぁ」
「どうなんでしょうね…。ここでの練習より厳しいって事はないと思いますけど…」
「ああ、いや、そうじゃなくて。先輩との上下関係的な?」
練習の強度で言えば、孤南君は間違いなくついていけると思う。俺から見ても、孤南君の練習量や密度は、中学生にしては中々ハードだ。
勿論、身体の成長を阻害しない程度だが。
問題は人間関係である。勝手な偏見だけど、体育会系の人間はそういうのに非常にうるさそうなのだ。
今の孤南君がそのまま入学したら、大型ルーキーとしてデビュー出来ると思う。この二年間で俺や三銃士とスパーリングして、実力はメキメキ上がってるんだ。
世界チャンピオンと日本チャンピオン三人だぞ? ………冷静に考えたらかなり豪華なスパーリング相手だな…。
まあ、そんな相手といつも練習してるんだ。真面目にやってて、それなりに才能があれば成長しない訳がない。
で、そんなのが入学してきたら、先輩からのやっかみとかが酷そうである。本当にただの偏見なんだけどね。
「そこは今から心配しても仕方ないと言いますか…」
「まあ、そうだよね」
孤南君が通う高校のボクシング部は良い人がいる事を願っておこう。もしいじめられてるとか、俺の耳に入ったら殴り込んでやるからな。
「プロとアマではルールも違うからな。その辺の対応が出来れば、孤南君はきっと良いところまでいけるよ」
「ですかね…。皆さんにスパーリングでずっと負けっぱなしなので、あんまり自信が持てないんですが…」
そりゃな。曲がりなりにも世界チャンピオンですし? 三銃士も日本チャンピオンですし? 中学生に負けてたらいかんでしょうよ。
それに三銃士はともかく、俺は孤南君と階級が違いすぎる。それでも食らいつこうとしてくる姿勢は凄いと思うけどね。
「まあ、まだ一年近くある。みっちりトレーニングして、鮮烈なデビューを飾ろうぜ」
「はい、頑張ります」
俺も次の試合に向けて頑張らないとな。孤南君の師匠は3階級制覇の世界チャンピオンなんだぜって言わせてやるぞ。
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