第134話 姉


 「え? 龍騎ってお姉ちゃんとかいたの?」


 「ああ。最近留学から帰って来た」


 シュークリームを食べて大満足。やっぱり甘いものは最高だねと思ったその日の夜。


 龍騎から電話が来てなんじゃらほいと、話してると、龍騎のお姉さんが俺を見たって報告だった。


 いつ会ったかなと、今日の行動を思い返してみるとすぐに分かった。あのコンビニで会った目つきの鋭いお姉さんだと。


 言われてみればちょっと顔が怖いのも納得だよね。しっかりと遺伝子が仕事をしてるらしい。


 「エクレアを取っちゃってごめんねだってさ」


 「お気になさらずと言っておいて」


 キャラメル味のシュークリームも美味しかったし。あれはあれで大満足でした。


 その後も軽く雑談をして、その日は終わり。龍騎のお姉さんだからといって、そう会う事もないだろうと。


 この時はそう思っていた。






 『対戦相手が決まったよ』


 「待ってました!」


 それからはひたすら練習の日々。そろそろ相手が決まらないとモチベーション維持もキツイぞと思ってる時だった。


 白鳥さんから待望の連絡が。


 『ウェルター級WBO世界チャンピオン。ガルバチョフ。ロシア人選手だね』


 「あれは無理でしたか」


 『うん。逃げられたね』


 俺がウェルター級で唯一戦いたいと思った選手にはどうやら逃げられたらしい。まあ、良いけど。絶対引きずり出すし。3団体制覇したら、流石に逃げられないだろ。


 俺が対戦を熱望しているやつの説明は、また対戦が決まった時にでも話そうと思う。一言で簡単に説明するとクズだ。今はそれだけ分かってもらえてれば良い。


 「あれと戦う為にも、ここではこけてられませんね」


 『うん。後で詳しい映像も送っておくよ』


 「お願いします」


 ガルバチョフかー。一応事前に情報は得てるけど、そこまで印象に残る選手じゃなかったなぁ。俺が一人を意識し過ぎてるだけかもだけど。


 まあ、映像だけじゃ相手の真価は分からないよね。スーパーライト級はそれで痛い目を見たし。


 白鳥さんから詳しい映像を入手したら、早速研究に取り掛かろう。ガルバチョフ選手には悪いけど、俺からしたら前哨戦だ。


 やつを引きずりだす餌になってもらうぞ。




 「シッ! シッ!」


 対戦相手が決まれば練習にも身が入るというもの。俺は父さんが構えてるミットめがけて、フックのダブルを叩き込む。


 「ダメだな。速さを意識し過ぎて手打ちになってる」


 「ふぬぅ」


 しっかり父さんにダメ出しされた。最近はパンチのスピードを上げたいと、練習に励んでるんだけどね。どうやら、そっちに意識がいきすぎらしい。


 「確かにそのスピードでパンチを出せたら脅威的だがな。上の階級の奴らはよほどクリーンヒットさせないと、この威力じゃ倒れてくれないぞ」


 「手のスピードに腰がついてこないんだよ」


 「足腰のトレーニングが足りてない証拠だ」


 「むーん。最近は重点的に鍛えてるんだけどな」


 「そんなすぐに筋肉はつかん。ただ筋肉をつけるだけでもダメだ。しっかり自分のものにしないとな」


 やっぱりボクシングは難しいなぁ。下半身の筋肉は重いから、トレーニングも控えめにしてたんだけど、それが仇になってる。


 簡単に言うとバランスが悪い。上半身についてきてない。試合までに良い感じに仕上げないといけないな。


 とりあえず最高威力のパンチを連続で打てるようにならないと。もう少し下半身トレーニングのメニューを増やすかね。


 せっかく階級を上げたけど、減量はまた苦労しそうだなぁ。


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 コメント欄でチンピラの姉ってバレててびっくりだぜ。分かりやすすぎたか。

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