第127話 VSスーパーライト級ジェイソン4


 「フシッ!」


 「い゛ぃ゛」


 いってー!! 思いっ切りボディに良いのを貰った。完全に意識の外からとんでもない威力で貰って、思わず呻き声が出ちゃったよ。


 『さあ! 試合は第7Rに突入! 開始早々ジェイソンが仕掛ける! 第6Rの後半辺りから、皇拳聖を捉える事が多くなってきてましたが、果たして大丈夫なのかー!?』


 現在第7R。序盤で仕留められそうだーって思ってた過去の自分をぶん殴ってやりたい。いや、実際倒せそうだったんだけど。


 第3Rと第4Rでもダウンを奪ったしね。観客もKOは時間の問題だと思って盛り上がってたし、俺もそう思ってた。


 でもジェイソン選手は何故か起き上がる度に強くなってる気がする。イキイキしてると言うかなんて言うか。


 マゾなのって思っちゃうぐらい。


 で、雲行きが怪しくなってしまったのが、第6Rの序盤。ジェイソン選手の死角からの左フックを毎度の如く感覚で避けた。


 が、微妙に当たった。これまでほぼ完璧に避けてて、心のどこかで油断してたのかもしれない。


 俺自身はそんなつもりはなかったけど、毎回避けれてるから、同じように回避行動を取った。取ったつもりだった。けど、甘かったのか、右まゆの下にパンチが中途半端に当たってカットした。


 「毛利!!」


 審判が試合も止めて治療。幸いそこまで傷は深くなかったけど、出血は出血。ちゃんと血を止められないと、有効打による出血だからちゃんと止めれないと負けになる。


 天下ジムには毛利さんという凄腕のカットマンがいるからすぐになんとかなったけどね。


 この毛利さんは父さんが現役の頃からずっと天下ジムにいる。父さんがデビュー戦でカットして負けて、相当悔しかったのか、腕を磨いて、今では業界でもピカイチの腕を持ってるんだ。


 けど、試合途中に止めたのは本当に応急処置。本格的な処置はラウンド間にしないといけない。それでも1分しかないけど。


 だから、俺は右瞼にパンチを貰わないように、注意しながらの立ち回りを強いられた訳だけど、後半辺りから右瞼を庇ってるせいでパンチをちょこちょこと貰うようになってきた。


 そしてそれは7R目に入ってからも続いている。ラウンド間にしっかり血は止めてもらったけど、同じところにパンチをもらったら、また出血する。


 必然的に庇いながらになる訳だ。しかも若干腫れてきてて、微妙に視界が塞がれてる。それにジェイソン選手が巧みに死角からパンチを打ってくるもんだから、ぽんぽこパンチをもらってる訳だ。


 マジで意識してないところからボディを貰うと滅茶苦茶痛い。来るぞって分かってたら、まだマシなんだけど。


 序盤に三回もダウン取ってて良かったぜ。多分このラウンドのポイントは取られてるし、6R目も怪しい。


 これがピンチというやつかとちょびっとだけ焦りながらも、俺は試合を楽しんでいた。


 この片目が微妙に塞がってるせいで、距離感がちょっと怪しくなってたけど、それも段々と慣れてきたし。


 それに俺の当て感はボクサーの中でも頭抜けてると自負している。これに慣れてきたら、どこかでデカいカウンターをぶちかましてやると、俺は虎視眈々とチャンスを待っていた。

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