第121話 末期
「毎度毎度になるけど、減量末期の食べ物の誘惑は半端ないな。慣れてきたけど、マジできつい」
2月に入ってほとんど学校にも行かなくなった。友達はみんな受験やらなんやらで忙しくしてるし、俺もこれで学校に行っても授業を受けられるテンションじゃない。
ライト級の時よりはマシだが、それでも俺はまだまだ成長期だからか、それとも特典の『超回復』の影響なのか、筋肉が増えて体重を落とすのがしんどくなってくる。
試合まで二週間を切ってて、この調子でいけば問題ないが、そろそろ本格的に落ちなくなっていくだろう。今回の試合に無事に勝つ事が出来ればまた階級を上げる予定だけど、これはある程度のところまで上げるまで付き纏う問題だよなぁ。
非常にお世話になってる『超回復』だけど、体重制限があるスポーツで、上限がどこにあるのか知らないけど、どんどん筋肉がついていくのはキツい。
でも不思議とムキムキのフィジークとかボディビルダーみたいな筋肉の付き方はしてないんだよな。鍛え方の違いもあるんだろうけど、なんかある程度筋肉が大きくなると、密度的なサムシングで引き締まっていくというか。
彫刻みたいな芸術作品的な体に更に磨きがかかってる。まあ、こういう筋肉の付き方をしてくれるのはありがたい。
筋肉が大きくなりすぎると可動域とかが狭くなっていくからなぁ。『柔軟な体』のお陰かな? もしかしたらボクシングをするのに最適な組み合わせだったのかもしれん。
『コーディネーション』も多分良い仕事をしてくれてるはず。俺が無駄に器用に対戦相手の模倣を出来たりするのは、体を思い通りに動かせてるからだし。
三銃士のスパーリングパートナーをする時に有用だし、自分の対戦相手を真似してこうされたら嫌だなってシミュレーションするのにも使える。
思えばこの三つの特典はどれも素晴らしいな。あの中間管理職で社畜の神様みたいな人は元気にしてるんだろうか。
頂いた能力のお陰で、そして何故か現代に転生したお陰で非常に楽しく過ごせてます。
こんな特典を頂いたからには、歴史に名を残すぐらいの活躍をしないと失礼である。そう! 俺は神の使徒としてボクシング界の英雄になるのだ!!
「やべぇ。空腹で思考が馬鹿になってる」
食べ物の事を考えないようにと、柔軟をしながら頭の中でぐるぐると意味の分からん思考をしすぎた。なんだ神の使徒って。厨二病はもう心の奥底に鍵をかけてしまっておいたはずだ。
空腹で鍵が緩んだのかもしれんな。しっかりしないと。
「高校生活最後の試合だ。派手に勝ちたい」
クラスメイトや友達も受験で忙しいのに今回も観に来てくれると言ってくれた。貴重な時間を割いて応援に来てくれるんだ。無様な姿は見せられん。
試合を見て俺も頑張ろうって思えるような試合にしたい。俺が出来るせめてもの手助けだ。
「1RKOとかしてド派手にぶちかましてやりたいところだけどなぁ。距離に適応するのにちょびっと時間が掛かるかも。同じぐらいのリーチの相手と試合するのは初めてだし」
一応竹刀にグローブを付けて打ってもらったりして対策はしてるけど。ジャブ一つ取っても個人個人で癖があるからなぁ。映像でなるべく呼吸を読み取ってはいるけど、こればっかりは試合をしてみない事にはなんとも言えん。
チャンピオンだし、生半可な相手じゃないからなぁ。そう上手い事いかないだろう。
「あーカップラーメン食べてぇ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます