第119話 小園チャンピオン
年を越して冬休みが終わった。
けど、高三の三学期はあまり登校する事もない。って事で、俺はジムに入り浸ってる。
試合まで後一ヶ月ちょっとって事で、減量もスタート。今の所順調に進んでいる。
「油断するのは良くないんだろうけど、映像を見た感じ負ける気がしないんだよなぁ」
今までと違ってリーチ差は活かせないけど、それだけなんだよな。総合的に見てケヴィン選手より弱い。完成度が段違いだ。
まあ、それでもチャンピオンだし、対策は練ってるんだけど、丁度良いスパーリング相手がいない。
日本に俺よりリーチが長い選手ってあんまり居ないんだよね。言い方が悪いけど、この辺の階級とかもっと上の階級で世界でぶいぶい言わせてる選手がいないから、正直練習にならない。
日本は軽量級なら強いんだけどね。中量から重量はまあ勝てない。日本の平均サイズが大きくないってのもあるけど。
「お疲れ様です!!」
「あ、小園さん」
ジムで柔軟しながら映像を見てると、この前日本タイトル戦をやった小園選手がやって来た。
顔をボッコボコに腫らして、激戦だったのが分かるけど満面の笑みだ。勝ったからね。判定勝ちになったけど、最終ラウンドで右フックのダブルでダウンさせた時は、かなり会場は盛り上がった。
それまではポイント五分か、夜木屋選手が微妙にリードしてるかなって感じだったし。俺も現地で応援させてもらいました。
夜木屋選手とも戦った事があるから、三銃士の時みたいに派手に応援はできなかったけど、一緒にスパーリングした仲だしね。あの漢涙には感動しました。
「どうしました?」
「皇さんのお陰で日本チャンピオンになれたのでそのご挨拶に!!」
柔軟を中断して、ててーっと走って向かうと、相変わらず声の大きい小園選手がわざわざ挨拶に来てくれたらしい。ご丁寧にどうも。
俺も車谷選手に挨拶に行くべきではと今更思いました。あの人のお陰でリュカ選手のスピード対策が出来たところもあるし。
今度菓子折りを持って行こう。もう手遅れかもしれないけどね。
「日本チャンピオン戴冠おめでとうございます」
「ありがとうございます!! 皇さんの声が届いたお陰でなんとか勝つ事が出来ました!!」
いやいや。割と大人しく応援してたと思うこど? 確かに『今だ! フック!』って、決定機でちょびっとだけ声を張り上げたものの、それだけだよ?
「あの声が聞こえたお陰でフックをダブルで放つ事が出来たんです!! 単発のパンチなら倒せてたかどうか分かりません!!」
さいですか。なんか恥ずかしいですね。夜木屋選手に悪いと思って控えめにしてたつもりなのに。
小園選手は30分ぐらい話して帰って行った。その後、改めて小園選手の試合の映像を見てみると、確かに俺の声がうっすらと聞こえる。
動画でこれって事は、会場ではもっと鮮明に聞こえてたんだろう。非常に恥ずかしいですね。
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