第118話 年を越して


 「高校生活最後のテスト終了ー!! お疲れ様、俺!! 最後までありがとう龍騎! 勉強地獄からの解放じゃー!!」


 先輩達の試合が終わってから少しして。

 俺は高校生活最後の鬼門を無事に突破した。三学期はテストがないからね。この二学期で終わりです。


 まだ結果は返ってきてないけど、手応えはばっちり。少なくとも赤点はないはずだ。


 「内部進学の奴以外は大学受験があるけどな」


 「龍騎は? 俺の面倒ばっかり見てたけど、外部に行くんじゃなかったっけ?」


 見た目チンピラなのに面倒見が良くて、頭も良いという外見詐欺の龍騎君。付きっきりで勉強を見てもらってた分際で申し訳ないけど、大丈夫なのかな?


 「問題ねぇ。もう安全圏だしな」


 「将来は何になりたいとかあるの?」


 気付けば高三でもうすぐ卒業。将来の目標とかが出てくる頃合いじゃないかな? 俺は頭が悪いし、幸い特典というチートがあったから、ボクシング一本で食べて行けるけど、これが無かったらどうなってたことやら。


 ボクシングをやってなかった可能性もあるな。成長を実感してるから、地味な練習を続けてられるけど、そうじゃなかったら早々に辞めてそう。


 で、親の脛を齧って生きてるんだ。控えめに言ってクズですね、ええ。


 「特にねぇな。大学でやりたい事が見つかれば良いけどよ」


 「そっかー」


 まあ、やりたい事があっても夢を叶えられる人なんて一握り。努力が必ず報われるとは限らない。運も必要だしな。その点俺は本当に恵まれてるよ。皆さんいつもありがとうございます。


 「俺が何か出来る事あったら言ってね。龍騎にはずっとお世話になったから」


 「ありがとな」


 こちらこそですよ。卒業出来るのは君のおかげですから。出来る事があったら頼りにしてください。限定的だけどコネはありますからね。




 「まさかまだ俺に試練があったとは…」


 「ここまで落ちる人も珍しいですねぇ」


 冬休みに突入。休みに入ってから俺は運転免許を取得する為に教習所に通っていた。で、効果測定とやらに合格出来ない。パソコンでぽちぽちやってるんだけど、⚪︎×の二分の一なのに、規定の得点まで到達出来ないのである。


 俺が3回落ちた時点で、教員さんが間違えたところを教えてくれてるのに、それでも1点届かなかったり。最終的に7回目で合格したけど、教員さんも苦笑いである。


 世界チャンピオンなのにこいつ頭悪いんだなとか思われてるんだろうなぁ。その通りです。幻滅させてごめんなさい。現実なんてこんなもんですよ。


 先が思いやられるぜ。こんな馬鹿が車を運転して良いのかと心配になってくる。運転手さんとか雇う方が現実的かもしれんな。




 「あけおめー!」


 教習所で悪戦苦闘してると、いつの間にか年を越していた。クリスマス? 知らない子ですねぇ。クラスの非リア充男友達とファミレスでリア充を呪ってました。


 2月には試合もあるし、そろそろ練習と減量も本格化してくる。それが終わったら卒業だ。気持ち良く卒業する為にも、試合に勝って2団体制覇といきたいところですな。

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